結論:多発性硬化症でも、症状のために日常生活や仕事が制限されていれば、障害年金を受け取れることがあります
多発性硬化症で障害年金を受け取れることはあります。
ただし、多発性硬化症と診断されたことや、指定難病であることだけで決まるわけではありません。決め手になるのは、病気によって生じた症状が、日常生活や仕事をどのくらい制限しているかです。症状の例は次のとおりです。
- 視力の低下
- 手足の麻痺やしびれ
- 歩行のふらつき
- 排尿の障害
- 物忘れなどの認知機能(記憶や注意など、考える力)の障害
多発性硬化症は、症状が出る場所によって、現れる症状が人によって大きく違います。日本年金機構の障害認定基準には「多発性硬化症」という病名は出てこないため、障害年金では、主に、症状の出ている部位に応じた基準(眼、肢体、神経系統、精神など)で見られます。障害認定基準とは、障害年金の等級を決めるときの国の基準です。
もう1つ大切なのは、初診日(障害の原因となった病気で、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日。診断名がついた日とは限りません)です。視力が落ちた、手足がしびれる、歩くとふらつく、といった症状から始まることがあります。診断がつくまでに時間がかかったり、最初は別の診療科や別の病名で診てもらったりすることもあります。
障害年金の初診日は、診断名がついた日とは限りません。障害の原因となった病気について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
この記事は、多発性硬化症で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、次の4点を説明します。
- 受け取れるかどうかの考え方
- 診断書の注意点
- 初診日の考え方
- 請求の流れ
多発性硬化症は、どんな病気か
難病情報センターの病気の解説(「多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)」)によると、多発性硬化症は、中枢神経系(脳・脊髄・視神経)の脱髄疾患(神経を包む膜が壊れる病気)の一つです。
炎症によって神経の線を包む「髄鞘」が壊れ、その傷んだ部分(病変)が脳や脊髄、視神経のあちこちにできます。同センターの解説では、神経症状の再発を繰り返す病気、と説明されています。
症状は、病変ができる場所によって千差万別とされています。たとえば、次のような症状があります。
- 視神経:視力が低下したり、視野が欠けたりします。
- 脳幹部(脳と脊髄をつなぐ部分):物が二重に見える、顔の感覚や運動が麻痺する、飲み込みにくくなる、しゃべりにくくなる、といったことが起こります。
- 小脳(体のバランスをとる部分):まっすぐ歩けなくなり、手が震えることがあります。
- 脊髄:胸や腹の帯状のしびれ、手足のしびれや運動麻痺、尿失禁、排尿・排便の障害などが起こります。
- 大脳:手足の感覚障害や運動障害のほか、認知機能に影響することもあります。
経過については、通常型の多発性硬化症の多くは、再発と寛解(症状が落ち着くこと)を繰り返しながら、長く続くとされています。一部は、しだいに進行する経過をたどるとされています。
再発の回数は、年に3〜4回から数年に1回まで、人によって違います。また、平均の発病年齢は30歳前後で、10歳未満には稀ですが、15歳未満で発病することもあるとされています。
同じページには、視神経脊髄炎(NMOSD)も一緒に解説されています。この記事は多発性硬化症を中心に書いていますが、障害認定基準には視神経脊髄炎という病名もありません。そのため、障害年金の考え方(症状ごとの基準で見る)は、視神経脊髄炎でも同じです。
障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。加入していた制度によって、受け取れる年金が変わります。原則として次の3つです(例外は下で説明します)。
- 初診日に会社員や公務員として厚生年金に加入していた方:1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされます。3級では障害厚生年金だけが支給されます(3級があるのは障害厚生年金だけです)。
- 初診日が国民年金の期間にある方:障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
- 初診日が、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる間にある方:その時点で年金制度に加入していなくても、以前に加入していたことがあれば、障害基礎年金の対象になります(国民年金法第30条第1項第2号)。
ただし、老齢基礎年金を繰上げ受給している(65歳より前に受け取り始めた)方には、この60歳以上65歳未満の特例は適用されません(国民年金法附則第9条の2の3)。
初診日が20歳前で、そのとき厚生年金に加入していなかった場合は、年金制度に加入していなくても、障害基礎年金の対象になることがあります(20歳前障害。国民年金法第30条の4)。
20歳になったとき(障害認定日がそのあとなら障害認定日)に、障害等級に当たる状態であれば、年金を受け取る権利が生じます(障害認定日とは、障害の程度を判断する基準になる日で、原則として初診日から1年6か月たった日です)。20歳前障害の場合は、所得制限があります(国民年金法第36条の3)。
くわしくは、20歳前に初診日がある方の障害年金をご覧ください。20歳前でも、厚生年金に加入している間に初診日があれば、障害厚生年金の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。保険料の納付の条件(納付要件。納めた期間と免除された期間をあわせて数えます)があります。
- 初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。
- 令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。次の節で説明します。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
障害の程度は、症状ごとに、どの基準で見られるか
障害認定基準の「障害認定に当たっての基本的事項」では、等級の目安を次のように示しています。
- 1級:「他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度」
- 2級:「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度」
- 3級(障害厚生年金だけ):労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度
ただし、「傷病が治らないもの」については、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度でも3級に当たる、とされています(障害認定基準 第2の1(3))。
つまり、1級は、他人の介助がなければ身の回りのことがほとんどできない状態です。2級は、必ずしも人の助けは要らないものの、日常生活が極めて難しく、働いて収入を得ることができない状態です。
多発性硬化症では、症状が出る場所によって、次のような基準で見られます。
眼の症状(視神経炎による視力低下・視野の欠け、物が二重に見える):眼の障害(第1節)の基準で見られます。視力障害は視力の測定結果で、視野障害は視野の測定結果で判断されます。
たとえば基準は、両眼の視力がそれぞれ0.03以下のものを1級の例、0.07以下のものを2級の例、0.1以下に減じたものを3級の例として示しています。
物が二重に見える(複視)ことは、程度が重い場合に、障害手当金に当たる程度の例として挙げられています。程度が重い場合とは、麻痺性斜視で複視が強く、片眼に眼帯をしないと生活できないため労働が制限される程度などです。
障害手当金は、初診日に厚生年金に加入していて、初診日から5年以内に傷病が治った(これ以上よくならない状態になった)ときに、一度だけ受け取るお金です。傷病が治っていないときは、障害手当金に当たる程度の障害でも3級に当たる、とされています(第2の1(3))。3級は障害厚生年金だけにあります。
手足の麻痺・しびれ・歩行障害:肢体の障害(第7節)の基準で見られます。神経系統の障害(第9節)には、肢体の障害の認定は第7節の認定要領に基づいて行う、と書かれています。
肢体の障害が上肢(腕)と下肢(足)などの広い範囲にわたる場合は、上肢・下肢・体幹(胴体)・脊柱(背骨)のそれぞれの基準によらず、「肢体の機能の障害」としてまとめて認定されます(第7節 第4)。関節の動く範囲、筋力、巧緻性(手先の器用さ)、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から、身体機能が総合的に認定されます。
一方、障害が両腕だけ、片腕だけ、両足だけ、片足だけ、体幹・脊柱だけといった範囲に限られる場合は、それぞれの部位(上肢・下肢・体幹・脊柱)の基準で認定されます(第7節 第4)。
ふらつき:体のバランスをとる働きの障害(平衡機能の障害。第4節)の基準もあります。基準には、平衡機能の障害には、原因が内耳性(耳の奥の器官が原因)のものだけでなく、脳性のものも含まれる、と書かれています。
言葉・飲み込みの障害:音声又は言語機能の障害(第6節)と、そしゃく(かむこと)・嚥下(飲み込むこと)機能の障害(第5節)の基準で見られます。
記憶・注意などの認知機能の障害:精神の障害(第8節)のうち「症状性を含む器質性精神障害」で見られます。この項は、中枢神経(脳や脊髄)等の器質障害(脳などの組織そのものの障害)を原因として生じる精神障害を含むものとされています。認知障害や人格変化などの程度が、等級の例として示されています。
排尿・排便の障害:障害認定基準には、排尿・排便の障害だけを対象にした節はありません(人工肛門・新膀胱の造設や尿路変更術を行った場合の定めが第18節にあります)。
基準に明示されていない障害は、「最も近似している認定基準の障害の程度に相当するものを準用して」認定すると定められています(第2の3(4))。つまり、最も近い障害の基準に当てはめて判断する、ということです。どの基準に当てはめて見られるかを、診断書を依頼する前に、年金事務所等や当センターにご確認ください。
脳の器質障害については、基準に「神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する」と書かれています(第9節)。つまり、原則として、神経の症状と精神の症状を分けずに、全体を見て判断する、ということです。
このため、神経の症状と、認知機能の症状の両方がある方は、診断書にその両方が書かれていることが大切です。
障害認定基準は、2つ以上の障害がある場合は、「併合等認定基準」によって組み合わせて認定すると定めています(第2の3(2))。つまり、複数の障害を合わせて等級を決める、ということです。ただし、脳の器質障害のように、基準が総合的に認定するとしている場合もあります。どの障害をどう組み合わせて見るかは、診断書の内容によって変わりますので、ご相談ください。
基準の「その他の疾患による障害」(第18節)には、「いわゆる難病」の定めがあります。
「いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。」とされ、続けて「なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。」とされています。
つまり、いわゆる難病は、診察や検査の結果にもとづいて、日常生活でどの程度のことができるかを十分に考えて、総合的に認定する、ということです。研究班や学会の診断基準・治療基準に当てはまるものは、病状の経過や治療の効果も参考にして認定する、とされています。これは、いわゆる難病を認定するときの考え方を示した定めです。
多発性硬化症がこの定めの対象に当たるかどうか、また、当たる場合にどの基準と診断書で見られるかは、基準に書かれていません。
症状が眼・手足・認知機能などに出ている場合は、前に説明した部位ごとの基準があります。肢体や精神の障害では日常生活の動作や日常生活能力が、眼の障害では視力・視野の測定結果が、判断の材料になります。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。各基準のくわしい説明は、肢体の障害認定基準、眼の障害認定基準、精神の障害認定基準のページにあります。
再発と寛解を繰り返す病気は、どう見られるか
多発性硬化症は、再発と寛解を繰り返すことが多い病気です。障害認定基準の「障害認定に当たっての基本的事項」には、次の定めがあります。
「『傷病が治らないもの』の障害の程度の認定に当たっては、障害の程度の認定時期以後おおむね1年以内に、その状態の変動が明らかに予測されるときは、その予測される状態を勘案して認定を行う。」
この定めは、「傷病が治らないもの」について、認定する時期のあとおおむね1年以内に、状態の変動が明らかに予測されるときの扱いを定めたものです。再発のたびに等級を見直す、という意味ではありません。
障害の程度は、診断書に書かれた現症日(診断書に書く状態を確認した日)の状態と、病歴・就労状況等申立書などの資料をもとに認定されます。診断書の現症日は、請求の種類によって範囲が決まっています。
- 障害認定日による請求(障害認定日の時点で等級に当たっていたとする請求):障害認定日以後3か月以内
- 事後重症による請求(障害認定日ではなく、請求した時点の状態で認定を受ける請求):請求日以前3か月以内
そのため、症状の重い時期だけを書いてもらうのではなく、現症日の状態に加えて、再発の回数や時期、寛解の程度、症状の波といった経過が正確に書かれていることが大切です。
多発性硬化症の方が、この定めの対象に当たるかどうか、また、どの程度の変動が「明らかに予測される」と見られるかは、基準に書かれておらず、日本年金機構が個別に判断します。
実務では、診断書と病歴・就労状況等申立書の両方に、日常生活でできないことや、症状が日によって変わることが、具体的に書かれていることが大切です。診察のときに、短い時間では伝わりにくい生活上の困りごとは、主治医に伝えておくことをおすすめします。
障害認定日の特例:初診日から1年6か月を待たずに請求できる場合
障害認定日は、原則として、初診日から1年6か月が過ぎた日です。
ただし、障害認定基準の神経系統の障害(第9節)には、特例があります。「神経系の障害により」次のいずれかの状態になっている場合は、「原則として初診日から起算して1年6月を経過した日以前であっても障害認定日として取り扱う」とされています。これは、等級の基準ではなく、障害認定日を早める定めです。
1つは、「脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき」です。この定めは、脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)についての定めで、多発性硬化症には当たりません。
もう1つは、次のとおりです。
「現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき。」
この定めには、条件がいくつもあります。
- 初診日から6月経過した日以後であること
- 「気管切開下での」人工呼吸器の使用や胃ろう(お腹から胃に栄養を送る管)等の「恒久的な措置」が行われていること
- 「今後の回復は期待できず」「日常の用を弁ずることができない状態」と認められること
多発性硬化症の方が、この定めに当たるかどうかは、基準に書かれていません。
この特例や、障害認定基準が定めるほかの特例(尿路変更術や新膀胱の造設など)に当たらない場合は、障害認定日は、原則どおり、初診日から1年6か月が過ぎた日です。それより前に、これ以上よくならない状態(症状の固定)になり、治療の効果が期待できなくなったときは、その日です。
診断書は、症状に応じた様式で、書いてもらいます
障害年金の診断書は、障害の部位によって様式が違います。日本年金機構は、次のような診断書などを定めています。
- 眼の障害用
- 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
- 肢体の障害用(様式第120号の3)
- 精神の障害用
- 血液・造血器・その他の障害用
多発性硬化症では、症状に応じて、たとえば次のように使い分けられることがあります。
- 手足の麻痺やしびれ、歩行障害が中心なら、肢体の障害用
- 視力や視野の障害が中心なら、眼の障害用
- 認知機能の障害があれば、精神の障害用
使用する診断書の種類や、診断書に記入する症状の日付を確認する必要があるため、日本年金機構は「診断書を作成する前に、必ず、年金事務所等にご相談ください」と案内しています。
症状が複数の部位にわたるときも、どの診断書が必要か、何枚出すかを、依頼する前に、年金事務所等か当センターにご確認ください。
現在の状態の診断書は、通常、いまの主治医に書いてもらいます。さかのぼって請求するときの障害認定日ごろの診断書は、その当時に診てもらっていた医療機関に依頼します。
肢体の障害用の診断書には、関節の動く範囲や筋力などの計測した結果を記入する欄と、日常生活の動作の欄があります。多発性硬化症で通院している診療科の医師が、診断書に慣れていないこともあります。そのため、依頼するときは、肢体の障害用の診断書であることを医療機関に伝えておくと安心です。計測をいつ行えるか(当日か、別の日の予約が必要か)も、確認しておくと安心です。
診断書については、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)と、障害年金の診断書のページをご覧ください。
初診日は、診断名がついた日とは限りません
障害年金の初診日は、その病気と、それが原因で起きた病気(法律では「起因する疾病」)について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です(国民年金法第30条第1項、厚生年金保険法第47条第1項)。診断名がついた日とは限りません。
多発性硬化症は、視力の低下、手足のしびれ、歩くときのふらつきなどから始まることがあります。その場合、最初に受診したのが眼科や内科、整形外科などで、のちに別の病院で多発性硬化症と診断される、ということが考えられます。
最初に別の病名で受診していた場合に、その受診が多発性硬化症の初診日として扱われるかどうかは、症状のつながりなどを見て、日本年金機構が判断します。初診日は、医師や請求する人が決めるものではなく、提出した書類や資料をもとに認定されます。
なお、健康診断で異常を指摘された日は、原則として、初診日になりません(平成27年9月28日 年管管発0928第6号)。
初診の病院と、診断書を書いてもらう病院が違う場合は、初診日を証明するための、医療機関が書く書類(受診状況等証明書)を、初診の病院に作成してもらうのが原則です。くわしくは、受診状況等証明書とはをご覧ください。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
指定難病の医療費助成と、障害年金は、別の制度です
多発性硬化症は、指定難病13(難病情報センターでの名称は「多発性硬化症/視神経脊髄炎」)です。
指定難病の医療費助成は、お住まいの都道府県・指定都市の窓口に申請する制度です。難病指定医が作成する臨床調査個人票(診断書)などを提出します(難病情報センター「指定難病の医療費助成制度」)。
障害年金は、日本年金機構が、障害年金の診断書などをもとに、障害の状態を認定する制度です。申請先も、提出する診断書も、別です。
そのため、医療費助成を受けているかどうかで、障害年金の結果が決まるわけではありません。医療費助成について、くわしくは、お住まいの都道府県の難病の窓口でご確認ください。難病全般の考え方は、難病で障害年金はもらえる?をご覧ください。
当センターのQ&A
当センターのQ&A(相談の記録)には、多発性硬化症の方からの相談が1件あります。
内容は、多発性硬化症により運動麻痺がある方で、5年前からめまいなどの症状があって受診していましたが、令和元年から症状が悪化し、多発性硬化症と診断された、というものです。相談者は、5年前も昨年も、加入していた年金は国民年金でした。そのため、請求するのは障害基礎年金になります。
現在の状態は、「不安定だが杖を使用し歩くことが出来る。リハビリを頑張ったので、摘まんだり握ったりもできる」というものでした。障害基礎年金は1級・2級に当たらなければ受け取れないため、このQ&Aでは、症状が軽く、障害年金を受給することは難しい、とお答えしました(Q&A)。このQ&Aに、その後の申請の結果は書かれていません。
障害基礎年金は、1級・2級だけです。3級は、初診日に厚生年金に加入していた方の障害厚生年金だけにあります。初診日がどの年金制度の期間にあるかによって、受け取れる年金の種類と等級が違うため、最初に確認してください。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。障害年金は、働いているかどうかだけで決まるものではなく、障害の状態が等級に当たるかどうかで決まります。
肢体の障害は、主に、関節の動きや筋力、日常生活の動作の状態で見られます。
認知機能の障害など、精神の障害として見られる場合は、障害認定基準に、次の定めがあります。労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、仕事の種類や内容、職場で受けている援助などを十分に確認する、という定めです(第8節)。
診断書には、日常生活や就労の状況を書く欄があります。職場で受けている配慮や、できなくなった作業、疲れたときの休憩の取り方などを、主治医に具体的に伝えておくことをおすすめします。
くわしくは、働いていても障害年金はもらえる?と、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
65歳前後の方へ
事後重症の請求(障害認定日ではなく、請求した時点の状態で認定を受ける請求)は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があります。
多発性硬化症は、50歳以上で発病することは少ないとされていますが、若いころに発病した方が、年をとってから再発することもあります(難病情報センター)。65歳が近い方は、65歳になる前に、早めにご相談ください。
当センターでは、65歳以上の方の障害年金の申請のお手伝いや無料相談は、原則としてお受けしておりません。ただし、老齢年金を受け取っておらず、障害年金の受給条件に当てはまる場合には、お受けすることもあります(くわしくは、65歳以上の方の障害年金:当センターでお手伝いできないこと、ご自身で確認していただきたいことをご覧ください)。
収入が途絶えて、老齢年金の繰上げ受給を考える方もいます。老齢年金を繰上げ受給する(65歳より前に受け取り始める)と、年金額は一生にわたって減額され、あとから取り消すこともできません。
さらに、繰上げ請求をした日以後は、次の請求ができなくなります。
- 事後重症による請求
- 60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない間に初診日がある場合の障害基礎年金の請求
条文は、障害基礎年金については国民年金法附則第9条の2の3です。障害厚生年金も、事後重症などによる請求はできません(厚生年金保険法附則第16条の3、日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。繰上げ受給を考えている方は、請求する前に、障害年金を受け取れないかを確認してください。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。さかのぼって受け取るための請求を、遡及請求といいます。
ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。障害認定日から1年以上たってから請求するときは、障害認定日ごろの診断書と、現在の診断書の2通が必要です。
障害認定日に等級に当たっていなかった場合や、障害認定日の診断書が取れない場合は、「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
また、老齢年金を繰上げ受給した方は、繰上げ請求をした日以後は、事後重症による請求ができなくなります(国民年金法附則第9条の2の3、厚生年金保険法附則第16条の3)。
多発性硬化症のように、再発と寛解を繰り返す病気では、障害認定日のころの診察の記録(視力、視野、関節の動く範囲、筋力などの計測)が残っているかどうかが、さかのぼって請求できるかどうかにかかわります。通院の記録や、検査の結果が手元にあるか、確認してください。
くわしくは、障害年金の遡及請求のページと、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)の年額は、次のとおりです(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です)。
- 2級:年額847,300円
- 1級:年額1,059,125円
子がいる場合は、子の人数に応じて年金額が上乗せされます(子の加算)。
障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、窓口
申請は、次の順で進みます。
- 初診日と年金制度の確認
- 初診日の証明
- 診断書の依頼
- 申立書の作成
- 年金請求書の提出
年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」令和8年度版)。認定審査を複数回行う場合は、4か月が目安とされています(令和8年4月以降。日本年金機構の運営評議会資料65-07、厚生労働省年金局「障害年金における認定調書の取扱いについて」)。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります。
窓口は、初診日に加入していた年金制度で決まります。
- お住まいの市区町村の窓口:初診日に国民年金の第1号被保険者だった方、初診日が20歳前で、そのとき厚生年金に加入していなかった方、60歳以上65歳未満で年金制度に加入していなかった方(老齢年金を繰上げで受け取っている方を除きます)
- 年金事務所または街角の年金相談センター:初診日に厚生年金に加入していた方、第3号被保険者だった方
- 共済組合等:初診日に共済組合の組合員だった方(その共済組合等が窓口になります)
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求(決定の見直しを求める手続き)ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。
診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。くわしくは、不支給から3か月以内にできることをご覧ください。
障害年金を受け取り始めたあと、障害の状態が変わる可能性があるとして「有期認定」とされた場合は、更新(診断書の再提出)があります。日本年金機構が指定した年に、障害状態確認届(診断書)を提出し、障害の状態を確認されます。次に障害状態確認届を提出する時期は、障害の状態に応じて決められ、年金証書の「次回診断書提出年月」で確認できます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。
障害の状態が変わらないとされた「永久認定」(更新のない認定)の場合は、この更新の手続きはありません。
更新については、障害年金の有期認定と永久認定の違いと、更新で支給停止・等級が下がったときをご覧ください。
反対に、症状が進んだときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、年金を受け取る権利を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。
3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。くわしくは、額改定請求のページをご覧ください。
障害者手帳との関係
身体障害者手帳(肢体不自由など)は、障害年金とは別の制度です。手帳の申請は、当センターでは受けておりません(くわしくは、障害者手帳をお持ちの方・取得をお考えの方へをご覧ください)。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。
電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。診断書の作成料は実費です。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
なお、生活保護を受けている方のご相談はお受けしておりません。65歳以上の方のご相談も、原則としてお受けしておりません(老齢年金を受け取っておらず、障害年金の受給条件に当てはまる場合には、お受けすることもあります)。くわしくは、65歳以上の方の障害年金、生活保護を受けている方は障害年金をもらえる?をご覧ください。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















