結論:障害認定日の状態で請求すれば、最大5年分さかのぼって受け取れます
障害年金の「遡及請求」は、障害認定日(原則として初診日から1年6か月が過ぎた日)にさかのぼって請求し、障害認定日の翌月分から年金を受け取る方法です。正式には「認定日請求」といいます。さかのぼって受け取れるのは、時効のため、5年分が限度です(100の質問Q78)。
遡及請求が認められるには、障害認定日の時点で、障害の状態が障害年金の等級に当たっていたことが必要です。その証明として、障害認定日から3か月以内の状態を書いた診断書が必要になります。障害認定日に等級に当たっていなかった場合や、診断書が用意できない場合は、遡及請求はできません。その場合は、現在の状態で請求する「事後重症請求」を考えます。
この記事は、遡及請求を考えている方と、そのご家族のために、さかのぼれる期間、条件、必要な診断書、遡及が難しいときの考え方、注意点を説明します。
まず確認:あなたは遡及請求できるか(3つの質問)
次の3つの質問に答えると、遡及請求ができそうかの見当がつきます。1. 障害認定日(原則として初診日から1年6か月が過ぎた日)の時点で、障害の状態が障害年金の等級に当たっていましたか?2. その頃(障害認定日から3か月以内)の状態を書いた診断書を、書いてもらえますか? その頃に通院していて、診療の記録が残っていることが目安です。3. 初診日が証明でき、保険料の納付要件を満たしていますか?
3つとも「はい」なら、遡及請求を考えられます。1か2が「いいえ」の場合は、遡及請求は難しく、現在の状態で請求する「事後重症請求」が中心になります。判断がつかないときは、当センターにご相談ください。
図遡及請求を考えられるかの3つの質問
請求の種類:認定日による請求(遡及請求)と事後重症による請求
障害年金の請求には、障害認定日の状態で請求する「障害認定日による請求(認定日請求)」と、障害認定日には等級に当たらなかった方が現在の状態で請求する「事後重症による請求(事後重症請求)」があります。障害認定日から時間がたってから認定日請求をするものが、一般に「遡及請求」と呼ばれます。
日本年金機構は、障害認定日の状態で請求する方法を「障害認定日による請求」、障害認定日より後に等級に当たるようになった方の請求を「事後重症による請求」と呼んでいます(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)。「遡及請求」は、障害認定日から1年以上たってから障害認定日による請求をする場合の、実務上の呼び方です。障害認定日から1年以内に請求する場合を「本来請求」と呼んで区別することもあります。
どちらの請求になるかで、受け取れる時期が変わります。認定日請求では障害認定日の翌月分から、事後重症請求では請求した月の翌月分からです。事後重症請求の年金は、さかのぼって受け取れません。
図初診日、障害認定日、2つの請求の意味
何年分さかのぼれるか
さかのぼれるのは、最大5年分です。時効によって、請求した日から5年より前の分は受け取れなくなります。年金は支払月ごとに受け取る権利が生じ、それぞれ5年を過ぎると時効で消滅するためです(国民年金法第102条第1項、厚生年金保険法第92条第1項)。障害認定日が10年前でも、受け取れるのは5年分までです。
当センターの事例には、5年遡及が認められた次のようなものがあります。
- うつ病で10年にわたって体調不良が続いた50代の男性が、障害厚生年金3級が認められ、5年遡及により初回の受給額は約350万円(年間約60万円)になりました(事例)。
- うつ病で15年通院していた40代の男性が、障害厚生年金2級(年間約143万円)が認められ、5年遡及により初回の受給額は約715万円でした(事例)。
請求が遅れるほど、5年を超えた分は受け取れなくなります。遡及を考えている方は、早めに手続きを始めることが大切です。
すでに障害年金を受け取っている方でも、遡及請求ができる場合があります。ただし、すでに受給している期間は対象になりません。当センターのQ&Aには、4年半前にご自身で事後重症請求をして2級を受給している方から、遡及できないかという相談がありました。認定日の診断書を取得し、申立書も詳しく書いて、あらためて請求すれば遡及できる可能性はあるものの、4年半前から受給しているため、遡及が認められても半年しかさかのぼれない、とお答えしました(Q&A)。
初診日が20歳前にあり、そのとき厚生年金に加入していなかった場合で、障害認定日が20歳になる前に来るときは、20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)の障害の状態で判断され、その翌月分から支給されます。障害認定日が20歳を過ぎてから来る場合は、障害認定日で判断されます(国民年金法第30条の4、日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)。当センターのQ&Aには、20歳前に初診日があるアスペルガー症候群の方について、20歳ごろの状態を書いた診断書が障害等級に当たるかどうかで決まる、とお答えしたものがあります(Q&A)。
遡及請求が認められる条件
遡及できるかどうかは、主に3つで決まります(Q&A)。
- 障害認定日の時点で、障害の程度が等級に当たっていること。この時点で等級に当たっていなければ、遡及請求は認められません。
- 障害認定日の時点の診断書(認定日から3か月以内の状態を書いたもの)が用意できること。診断書がない場合や、内容が等級に当たらない場合は、遡及請求は通りません。
- 時効の制限。さかのぼれるのは5年分までです。
そのほか、初診日が証明できること、保険料の納付要件を満たしていることが、通常の請求と同じように必要です。
認定日の診断書が取れるか:決め手になる点
遡及請求の最大のハードルは、障害認定日ごろの診断書が取れるかどうかです。障害認定日の診断書は、障害認定日から3か月以内に受診していた医療機関に、当時の診療記録をもとに作成してもらいます。その時期に受診していなかった場合や、診療記録が残っていない場合は、認定日の診断書が用意できず、さかのぼっての請求ができないことがあります(100の質問Q19)。
当センターの事例には、初診から2年間通院したクリニックに、認定日の診断書を依頼したところ、「4年前から受診しておらず、当時の診断書が書けるほどのデータがない」と言われた方がいます。認定日には転職して派遣社員として働いていたこともあり、遡及請求を断念して事後重症請求にし、障害厚生年金2級が決まりました(事例)。
同じ医療機関に長く通院していれば、認定日の診断書も、現在の診断書も取りやすくなります。当センターの事例では、15年近くずっと同じ心療内科に通院していたため、診断書の取得がスムーズでした(前の節の事例12466)。
必要な診断書は、何通か
遡及請求(認定日請求)に必要な診断書は、次のとおりです(日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」)。
- 障害認定日から3か月以内の現症の診断書
- 障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は、請求日前3か月以内の現症の診断書もあわせて必要です。
なお、当センターの事例12466では、請求先の共済から「認定日」「5年前」「現在」の3枚の診断書の提出を求められました。同じ心療内科に長く通院していたため、3枚とも取得できました(事例)。求められる診断書は、請求先や個別の事情で変わることがあるため、請求前に確認してください。
診断書の「現症日」と作成日は別です。診断書の書き方や確認のしかたは、障害年金の診断書:種類・依頼・確認・書いてもらえないときの対処をご覧ください。
図診断書は「いつの状態」を書いたものが必要か
病歴・就労状況等申立書には、認定日ごろの生活を書きます
遡及請求では、病歴・就労状況等申立書に、障害認定日ごろの生活の状況を、具体的に書くことが大切です。当センターの事例では、認定日ごろの生活について、買い物や家事が一人でできず、家族の手を借りながら何とかやっていた状況を、詳しく書きました(事例)。うつ病で10年体調不良が続いた方の事例でも、初診の病院を受診するに至った状況から現在までの状況を、詳しく申立書に書いて、遡及請求を行いました(事例)。
障害認定日の考え方:原則と、特例
障害認定日は、原則として、初診日から1年6か月が過ぎた日です。ただし、それより前に、けがや病気が治った(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態になった)場合は、その日が障害認定日になります(国民年金法第30条第1項、厚生年金保険法第47条第1項)。
特例のある病気もあります。たとえば、脳血管障害で手足に麻痺が残った場合は、初診日から6か月が過ぎた日以後に、医学的にこれ以上の回復がほとんど望めないと認められれば、その日が障害認定日になることがあります。当センターの事例では、脳出血で左半身不随になった30代の男性について、医師が症状固定と診断した日を障害認定日として診断書を作成してもらい、遡及が認められ、障害厚生年金2級(年間約105万円)が決まりました(事例)。ほかにも、人工関節、人工弁、ペースメーカー、人工透析など、病気ごとに認定日の特例があります。くわしくは、病名ごとの解説をご覧ください(病気別の障害年金の解説)。
遡及が認められなかったとき:事後重症で受け取れることがあります
遡及請求を試みて、認定日の分は認められなかったとしても、現在の状態で事後重症として認められれば、請求した月の翌月分から受け取れることがあります。
- うつ病で遡及請求をした40代の女性の事例では、認定日の診断書は症状が比較的軽度に書かれており、年金に相当すると認められず、事後重症のみで障害厚生年金3級(年間約110万円)が決まりました(事例)。
- 腎硬化症と狭心症の2つの傷病で請求した50代の女性の事例では、実務的には遡及は厳しい可能性が高いと考えられましたが、ご本人が「可能性が少しでもあるなら遡及請求したい」と希望されたため、認定日請求もあわせて進めました。結果として、認定日の遡及請求は不支給でしたが、現在は透析を継続していることから、事後重症で障害基礎年金2級(年間約83万円)が決まりました。遡及が認められない場合は、年金請求の翌月分からの支給になるため、書類を迅速にそろえ、契約の翌月に申請したことが書かれています(事例)。
遡及を試みるかどうかは、認定日ごろの診断書が取れるか、当時の症状が等級に当たっていたと言えるかを見て、ご本人と相談して決めます。障害認定日による請求をするときは、認められなかった場合に備えて、事後重症による請求をあわせてしておくのが通例です。事後重症の分は請求した月の翌月分からの支給になるため、認定日の診断書を待って請求が遅れると、その分だけ受け取りが遅れます。
事後重症請求の条件・期限・注意点は、事後重症請求のページで解説しています。
65歳を過ぎてからの請求
事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります(国民年金法第30条の2第1項、厚生年金保険法第47条の2第1項)。一方、障害認定日による請求には、この年齢の期限はありません。初診日が年金に加入していた期間などにあり、障害認定日の時点で等級に当たっていたのであれば、65歳を過ぎてからでも請求できます(さかのぼって受け取れるのは5年分までです)。当センターのQ&Aには、65歳を過ぎてから人工透析をすることになった方について、障害認定日の時点で障害年金に相当する状態であれば、納付要件を満たしていれば遡って受給できる、障害認定日の状態が基準に満たなければ遡及できず、事後重症の手続きも65歳を過ぎるとできない、とお答えしたものがあります(Q&A)。
また、65歳の誕生日を前に、障害年金を受給している方から、過去にさかのぼって支給を受けられるかという相談に対しては、初診日から1年半後の診断書が取れれば可能で、以前に申請した請求書類が必要になる、とお答えしたものがあります(Q&A)。
傷病手当金や、老齢年金との関係
同じ病気やけがで、傷病手当金と障害厚生年金を受けられる期間が重なると、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同じ病気の障害基礎年金があれば、その額との合計)を360で割った額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法第108条第3項)。障害厚生年金がさかのぼって決まると、重なる期間にすでに受け取った傷病手当金の返還を求められることがあります。この調整は障害厚生年金を受けるときのものです。くわしくは、加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合)にお問い合わせください。当センターの事例には、会社からの手当や傷病手当金を受けていたため、さかのぼっての請求はせず、事後重症請求にしたものがあります(脳梗塞で障害年金はもらえる?の事例8666)。
老齢年金の繰上げ受給をすると、繰上げ請求をした日以後は、事後重症などによる障害年金を請求できなくなります(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)。遡及を考えている方は、繰上げ受給の前に、障害年金を受け取れないかを確認してください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条第1項)(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません(国民年金法第34条第3項、厚生年金保険法第52条第3項。障害の程度が明らかに重くなった一定の場合は、1年を待たずに請求できます)。3級の障害厚生年金を受けている方で、同じ傷病による障害基礎年金の受給権を持ったことがない方は、65歳以上になると額改定請求ができません(厚生年金保険法第52条第7項)。
65歳以上の方の障害年金については、65歳以上の方の障害年金:当センターでお手伝いできないこと、ご自身で確認していただきたいことでも解説しています。当センターでは、65歳以上の方の申請のお手伝いや無料相談は、原則としてお受けしておりません。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
あわせて、初診日の証明については「受診状況等証明書とは」、申立書については「病歴・就労状況等申立書とは」もご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。このほか、診断書の作成料(医療機関に支払う実費)は、受給できたかどうかにかかわらずご負担いただきます。医師への同行などをご依頼いただく場合は、日当がかかることがあります(100の質問Q90)。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定では、1分ほどの入力で、受給の可能性について社会保険労務士の判定を受けられます(結果は目安で、受給をお約束するものではありません)。
額改定請求については、障害年金の額改定請求:悪化したときに等級を上げる請求の条件・時期・注意点でも解説しています。
不支給になったときの手続き(審査請求・再請求)については、障害年金が不支給になったとき(通知から3か月以内の方へ):審査請求・再請求・期限でも解説しています。
障害年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金)については、障害年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金):どれを受け取れるかは初診日で決まりますでも解説しています。
遡及請求に関する受給事例
遡及請求が関わった受給事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- うつ病による体調不良が10年継続 障害年金を手続きし5年遡及が認められた事例
- うつ病で15年間通院 5年遡及を含め障害年金を受給した事例
- 脳出血により障害厚生年金2級、初診から半年後を認定日として遡及が認められた事例
- 鬱病で遡及請求、事後重症のみ認められた事例
- 腎硬化症と狭心症で2つの傷病で請求するも遡及は不支給|障害基礎年金で事後重症2級となった事例
- 遡及請求を断念し事後重症。鬱病で障害共済年金2級が決定した事例
事例は、受給をお約束するものではありません。遡及できるかどうかは、障害認定日ごろの状態と、診断書の内容によって決まります。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一
自分での申請については、障害年金は自分で申請できる?つまずきやすい点と、専門家に頼むか迷ったときでも解説しています。






















