結論:手足を切断した場合、障害年金の対象になります
手足を切断した場合は、障害認定基準に、切断の部位ごとの基準があります。病名ではなく、どの部位を失ったかが、等級の目安になります。たとえば、片方の下肢を足関節以上で欠いた場合は2級、両方の下肢を足関節以上で欠いた場合は1級の基準に当たります。
切断の原因は、糖尿病による壊疽、動脈の病気、事故、労災などさまざまです。原因によって、初診日の考え方や、他の制度との調整が変わります。この記事では、手足の切断で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、等級の目安、障害認定日、原因ごとの注意点、申請の進め方を説明します。
切断の部位と等級の目安
障害年金の等級は、国民年金法施行令・厚生年金保険法施行令の別表で定められています。切断に関するおもな基準は、次のとおりです。
- 下肢:両下肢を足関節以上で欠くものは1級、一下肢を足関節以上で欠くものは2級、一下肢をリスフラン関節以上で失ったものは3級。
- 上肢:両上肢の全ての指を欠くものは1級。一上肢の全ての指を欠くもの、両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くものは2級。手首やひじ、肩で腕を切断した場合は、その腕の全ての指を欠いた状態になるため、片腕なら2級、両腕なら1級の基準に当たります。
- 指:おや指とひとさし指を失ったもの、または、おや指かひとさし指を含めて3指以上を失ったものは3級。これより軽い指の欠損は、障害手当金(一時金)の対象になる場合がある。
3級と障害手当金は、初診日に厚生年金に加入していた方(障害厚生年金)だけの制度です。初診日に国民年金だけに加入していた方は、1級か2級に当たらないと受け取れません。障害手当金は、初診日から5年以内に症状が固定した場合が対象です(厚生年金保険法第55条)。
等級は、切断した部位で基準が決まります。ほかの部位の障害が重なる場合は、あわせて判断されます。
1年6か月以内に切断した場合は、切断した日が障害認定日になります
障害年金の障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日です。ただし、それより前に病気やけがが治った(症状が固定した)場合は、その日が障害認定日になります。手足の切断・離断はこれに当たるため、初診日から1年6か月以内に切断・離断した場合は、切断または離断をした日が障害認定日になります(国民年金法第30条第1項、厚生年金保険法第47条第1項、障害認定基準「肢体の障害」)。障害手当金の場合は、傷口(創面)が治った日で判断します。
切断・離断が初診日から1年6か月を過ぎてからの場合、障害認定日は初診日から1年6か月を過ぎた日のままで、切断した日にはなりません。たとえば、糖尿病で治療を始めてから2年たったあとに足を切断した場合です。この場合、障害認定日の時点ではまだ足を切断していないので、その時点でほかの症状によって等級に当たっていなければ、切断のあとに事後重症請求をします。当センターの事例にも、初診から2年たったあとに下肢を切断した50代の女性がいます。遡及請求はできず、事後重症請求で障害基礎年金2級が決まりました(事例)。
初診日は、切断の原因になった病気やけがの初診日です
手足を切断した日が初診日になるわけではありません。初診日は、切断の原因になった病気やけがについて、初めて医師の診療を受けた日です。
- 糖尿病による壊疽の場合:糖尿病で初めて医師の診療を受けた日が初診日です。当センターの事例には、10年前に歯が抜けて歯科を受診し、総合病院の歯科で血液検査を受けて糖尿病とわかった方がいます。紹介状が残っていたことで、初診日を確定できました(事例)。
- 事故・労災の場合:事故のあと、最初に医師の診療を受けた日が初診日です。
- 動脈の病気(閉塞性動脈硬化症、バージャー病など)の場合:その病気で初めて医師の診療を受けた日が初診日です。
初診日が厚生年金の加入中なら障害厚生年金、国民年金の加入中なら障害基礎年金が対象になります。初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
糖尿病などが原因で切断した場合
糖尿病による壊疽で足を切断した場合、障害年金の対象になります(糖尿病の障害年金の全体像は、糖尿病で障害年金はもらえる?をご覧ください)。切断の時期によって、請求の方法が変わります。
- 初診から1年6か月以内に切断した:切断した日が障害認定日になり、認定日請求ができます。
- 切断が、初診から1年6か月を過ぎてからだった:障害認定日の時点で、ほかの症状によって等級に当たっていなければ、事後重症請求になります(前の節の事例6170、次の事例11193)。
- 入院中に急いで手続きをしたい:当センターの事例には、糖尿病性壊疽で膝から下を切断した40代の男性が、入院中に郵送で手続きを依頼し、障害厚生年金2級が決まったものがあります。傷病手当金の期間が終わる前に、障害年金を確定させたいという希望でした。認定日ごろの検査データは3級の基準に当たらなかったため、事後重症請求になりました(事例)。
当センターには、糖尿病性の壊疽で足を切断し、障害厚生年金2級が決まって、2年分さかのぼって受け取れた事例もあります(事例)。
切断の前に人工透析を受けている方は、透析と切断を、あわせて考えます。人工透析で2級が決まった方が、1年後に下肢を切断し、額改定請求で1級に上がった事例があります(事例)。人工透析の障害年金は、人工透析で障害年金はもらえる?をご覧ください。
指を切断した場合
指の切断は、失った指の本数と種類によって、障害年金(3級)か、障害手当金か、どちらにも当たらないかが分かれます。
- おや指とひとさし指を失ったもの、または、おや指かひとさし指を含めて3指以上を失ったもの:3級。
- 2指以上を失ったもの、ひとさし指を失ったものなど:障害手当金(一時金)の対象になる場合がある。
- 中指だけを失った場合などは、原則として、障害年金の対象にも、障害手当金の対象にも当たりません。
3級と障害手当金は、初診日に厚生年金に加入していた方(障害厚生年金)だけの制度です。初診日に国民年金だけに加入していた方は、1級か2級に当たらないと受け取れません。障害手当金は、初診日から5年以内に症状が固定した場合が対象です(厚生年金保険法第55条)。
当センターのQ&Aに、仕事中に中指を切断した方からの相談があります。中指のみの場合は、手当金の対象でもないため、対象外とお答えしています(Q&A)。
手指・足指の切断は、手指切断後の障害等級と障害者手帳、障害年金の申請方法、足指切断後の障害等級と障害者手帳、障害年金の申請方法もご覧ください。
仕事中の事故で手が機械に巻き込まれ、指を切断した30代の男性の事例では、手首の機能がまったくなく、利き手が使えない状態が診断書に反映されました。障害厚生年金3級が決まり、3年さかのぼって受け取れました(事例)。
労災・損害賠償との調整
仕事中や通勤中の事故で切断した場合は、労災保険から年金(障害(補償)等年金)を受けていることがあります。同じ原因で障害厚生年金や障害基礎年金も受けられる場合は、障害年金は全額支給され、労災の年金のほうが一定の率(0.73〜0.88)をかけて減額されます(厚生労働省「労災保険給付と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか」)。
ただし、20歳前に初診日がある障害基礎年金(厚生年金に加入していた間に初診日がある場合を除きます)は例外です。この年金は、労災の年金を受けている間、労災の年金の額の範囲で、障害年金のほうが支給停止になります(国民年金法第36条の2)。
当センターの事例には、昭和49年、学校を卒業して就職した1週間目の仕事中に右腕を切断した60代の男性がいます。旧法(昭和61年4月の改正前)が適用されるという判断になり、20歳前障害による障害基礎年金として請求して、2級が決まりました。しかし、労災の年金との調整により、受け取れる年金は0円でした(事例)。古い労災事故では、どの年金として扱われるかによって調整のしかたが変わり、決定まで受け取れる額がわからないことがあります。
交通事故が原因の場合は、加害者側から損害賠償を受けると、障害年金が一定の期間、支給停止になる場合があります。くわしくは、交通事故で障害年金はもらえる?をご覧ください。
診断書と申立書で気をつけること
診断書は、現在の主治医に、肢体の障害用の所定の様式(様式第120号の3)で書いてもらいます。切断の場合は、切断した部位と日付、義肢の使用状況、残っている関節の動きや筋力を、主治医に伝えて記載してもらうことが大切です。切断した日が障害認定日の場合は、認定日の診断書と、現在の診断書が、それぞれ必要になる場合があります。
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの経過と、仕事や日常生活の状況を書く書類です。切断のあと、できなくなったことや、困っていることを、具体的に書きます。
診断書の費用や依頼先については、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
働いていても、受け取れますか
手足を切断していても、仕事に復帰される方はいます。切断の等級は、切断した部位が基準になりますが、職場での状況や、必要な配慮は、診断書と申立書に書いておくことが大切です。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。
障害認定日の時点で等級に当たっていなかった場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。ただし、手足の切断のように、状態が変わらないと考えられる障害では、確認の時期が決まらない永久認定となる場合があります。当センターの事例には、下肢を切断した方が、障害厚生年金2級の永久認定となったものがあります(事例)。
悪化したときや、別の部位も切断したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。なお、3級を受けている方が一下肢を足関節以上で欠いた場合や、2級を受けている方が両下肢を足関節以上で欠いた場合など、障害の程度が明らかに重くなったと省令で定められている場合は、1年を待たずに請求できます(厚生年金保険法施行規則第47条の2の2、国民年金法施行規則第33条の2の2)。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
手足切断の受給事例
手足の切断で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 糖尿病性右足壊疽による足切断(四肢切断)で障害厚生年金2級を取得、2年遡及できた事例
- 糖尿病による下肢切断で障害基礎年金2級、年間約78万円受給できたケース
- 糖尿病性壊疽により下肢切断となった方、入院中に手続き委任を受けて障害厚生年金2級を受給決定した事例
- 糖尿病からの透析で障害厚生年金2級、その後下肢切断(四肢切断)により額改定で障害厚生年金1級になった事例
- 労災による右腕切断(旧法適用)により障害基礎年金2級を取得、しかし労災との調整により支給がなくなったケース
- 事故により指欠損。障害年金3級が決定した事例
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ切断でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















