結論:発達障害でも、障害年金を受け取れることがあります
発達障害は、障害年金の対象になります。ただし、診断名があるだけで受け取れるわけではありません。障害年金は、病名ではなく、障害によって日常生活や仕事がどのくらい制限されているかで決まります。知能指数が高い方や、障害者雇用や一般企業で働いている方でも、受け取れることがあります。
障害認定基準では、「発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう」とされています(障害認定基準 第3第1章第8節「精神の障害」のE「発達障害」(1))。診断名が自閉スペクトラム症でも、ADHDでも、その両方でも、同じ「発達障害」として審査されます。学習障害も定義に含まれますが、等級は診断名ではなく、日常生活や仕事への制限の程度で判断されます。
受け取るための条件は、大きく3つです。初診日(発達障害の症状について、初めて医師の診療を受けた日)に、国民年金か厚生年金に加入していたこと。初診日の前日までの保険料の納付状況が要件を満たしていること(初診日が20歳前で、年金制度に加入していなかった期間にある場合は、この2つは問われません)。そして、障害認定日(原則として初診日から1年6か月後。初診日が20歳前にある場合は、20歳の誕生日の前日か、初診日から1年6か月後のどちらか遅いほう)か、その後65歳の誕生日の前々日までに、障害の状態が等級に当たっていることです。
この記事は、発達障害で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、発達障害に共通する考え方を説明します。診断名ごとのくわしい説明は、自閉症の記事(自閉症(自閉スペクトラム症)で障害年金はもらえる?)と、ADHDの記事(注意欠陥多動障害(ADHD)で障害年金はもらえる?)もご覧ください。
発達障害で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。20歳になる前で、年金制度に加入していなかった期間に初診日がある場合は、障害基礎年金の対象になります。この場合は保険料の納付は問われませんが、本人の所得による支給制限があります(20歳前でも、会社員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、厚生年金の期間として扱われます)。
初診日が、厚生年金と国民年金(20歳前を含む)のどちらの期間かで、結果が変わります。3級は障害厚生年金だけの等級のため、初診日が厚生年金の期間にない方は、1級か2級に当たらなければ受け取れません。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。次の節で説明します。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。発達障害の扱いは、「発達障害(ADHD・自閉スペクトラム症)は対象になりますか?」(Q37)にまとめています。
発達障害は、どのように等級が判断されるのか
発達障害は、障害認定基準の「精神の障害」のなかで扱われます。診断書や、ご本人(ご家族)が書く病歴・就労状況等申立書をもとに、日本年金機構が審査します。
発達障害は、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により、対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定されます。等級は、社会性やコミュニケーション能力の程度、不適応な行動の有無、必要な援助の程度などで判断されます。一般就労していても、援助や配慮のもとで働いている場合があるため、仕事の状況だけで判断されるわけではありません。
等級のおおまかな考え方は、次のとおりです。1級は、日常生活の用を弁ずることができない程度、つまり他人の介助を受けなければ、ほとんど自分の用を足せない程度です。2級は、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度です。3級は、労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、および、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものです。
発達障害については、認定基準に次の例示があります。1級は、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの。2級は、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの。3級は、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるものです。
診断書(精神の障害用)には、日常生活能力の程度(5段階)と、日常生活能力の判定(7つの場面について、それぞれ4段階で評価するもの)が書かれます。これらは等級を考えるときの目安になりますが、数字だけで決まるわけではありません。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。
診断名が重なっているとき、ほかの病気や障害があるとき
発達障害は、自閉スペクトラム症とADHDが重なっていたり、うつ病や双極性障害などをあわせて持っていたりすることがあります。発達障害と、うつ病や双極性障害などほかの精神疾患をあわせて持っている場合は、それぞれの等級を組み合わせる(併合認定)のではなく、すべての症状を総合的に判断して等級が決まります(障害認定基準 第8節 E(2))。当センターの事例には、次のようなものがあります。
- 自閉スペクトラム症と注意欠如多動症(ADHD)と診断された20代の女性の事例です。入浴や歯磨きなど身の回りのことが十分にできず、食事は家族の支援に頼り、コミュニケーションは主にメモでのやり取りでした。幼少期から現在までの症状を時系列で整理し、「できない」と書くのではなく、入浴の頻度、食事の管理、家族との関係など、実際の生活を具体的に書いて、障害基礎年金2級(年額約83万円)が決まりました(事例)。
- 注意欠如多動症と双極性感情障害のある30代の女性の事例です。幼少期から対人距離の取り方や感覚過敏、自傷行為があり、登下校に家族の送迎が必要でした。就職しても続かず、休職と退職を繰り返し、日常生活は母親のサポートなしには成り立ちませんでした。複数の心療内科・精神科への通院歴を時系列で整理し、職場での困難や休職歴も書いて、障害基礎年金2級(年額約84万円)が決まりました(事例)。
双極性障害の障害年金は、双極性障害で障害年金はもらえる?で、知的障害を伴う場合は、知的障害で障害年金はもらえる?で説明しています。
大人になってから診断された場合
発達障害は、子どものころから特性があっても受診につながらず、大人になってから初めて診断される方もいます。当センターの事例には、次のようなものがあります。
- 認知症のお母さまの往診に来た医師との会話をきっかけに受診を勧められ、55歳で発達障害と診断された50代の女性の事例です。医師から障害年金の手続きを勧められ、年金事務所を訪ねましたが、手続きが複雑で理解できずに困っていました。幼少期から忘れ物や宿題のつまずきが続き、友人関係が築けず孤立やいじめを受け、成長後も家事や買い物など生活全般に支障が残っていたことを整理して、申立書を作成し、診断書の依頼に添付しました。障害基礎年金2級(年額約81万円)が決まりました(事例)。
- 小学生のころから授業に集中できず、卒業後は転職を繰り返した40代の男性の事例です。ネットで大人の発達障害を知って心療内科を受診し、受診から1年半たったころ、医師から障害年金を勧められました。申立書には、小学生のころからの特性、現在までの日常生活、就労してもできなかったこと、自宅での家事や子育ての様子を書いて、障害基礎年金2級(年額約125万円。子の加算2人分を含む)が決まりました(事例)。
発達障害の初診日は、「発達障害と診断された日」ではなく、発達障害の症状について、初めて医師の診療を受けた日です。知的障害を伴わない方が、20歳を過ぎてから初めて受診した場合は、その受診日が初診日です。知的障害を伴う場合は、初診日の取扱いが異なることがありますので、個別にご相談ください。初診日によって、どの年金制度で請求するかが変わるため、確認が重要です。初診日の証明には、初めて受診した医療機関に書いてもらう「受診状況等証明書」を使います。くわしくは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
通院が途切れていても、あきらめない
子どものころに受診したあと、通院をやめていた方もいます。当センターの事例には、中学生のころに心療内科を受診して、注意欠陥多動性障害の診断を受けたあと、通院をやめていた20代の女性の事例があります。20歳になる時点では自室に引きこもり、家族とはメモでのやり取りでした。20歳を迎えるにあたり、お母様がLINEで事務所に連絡されました。中学生のころに通っていた医療機関を再び受診してもらい、5年ぶりの受診でしたが、障害年金の手続きを考えていることを医師に伝えました。初診の医療機関が診断書も書くことになったため、受診状況等証明書は不要でした(初診の医療機関と、診断書を書く医療機関が同じ場合は、受診状況等証明書は要りません)。3回受診を続けたところで診断書を依頼し、診断書の依頼には、生後から現在までの申立書を添えました。20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)を障害認定日とした請求で、障害基礎年金2級(年額約83万円)が決まりました(事例)。
初診日が20歳前の方は、20歳の誕生日の前日が障害認定日になる場合があり、その前後3か月以内の状態を書いた診断書で請求できます。
診断書で気をつけること
診断書は、現在の主治医に、精神の障害用の所定の様式(様式第120号の4)で書いてもらいます。発達障害では、「障害の状態」欄の「発達障害関連症状」(相互的な社会関係の質的障害、言語コミュニケーションの障害、限定した常同的で反復的な関心と行動、その他)や、「これまでの発育・養育歴等」の欄に、幼少期の状況が記入されます。診断書は、受給できるかどうかを大きく左右する書類です。
発達障害は、幼少期からの経過が大切です。当センターの事例では、生まれてから現在までの生活を詳しくまとめて、診断書の依頼のときに添えています。診断書に、幼少期から現在までの経過が反映されるようにするためです。日常生活でできないこと、困っていること、家族や周囲から受けている援助を、メモにして主治医に渡す方法もあります。
診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
病歴・就労状況等申立書では、生まれてからの様子を具体的に書きます
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの経過と、仕事や日常生活の状況を書く書類です。診断書は医師が書き、申立書はご本人(ご家族)が書くため、診断書だけでは伝わらない日常の様子を補う役割があります。発達障害では、幼少期からの経過を書くことが大切です。「できない」だけでなく、どんな場面でどう困っているかが伝わるように整理します。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけで、対象外になることはありません。審査では、仕事の種類や内容、勤務の日数や時間、職場から受けている配慮や援助、同僚との意思疎通の状況などが確認されます。障害者雇用で働いている場合も、同じです。働いている場合の判断は、働き方や、職場で受けている援助の内容によって大きく変わります。個別の状況によって結論は変わりますので、あきらめる前にご相談ください。くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。障害認定日のころに受診していて、診断書を書いてもらえることが必要です。
障害認定日の時点で等級に当たっていなかった場合や、認定日のころに通院していなかった場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。受け取れることが決まると、年金証書が届き、1〜2か月後ごろに最初の振込が始まります。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日(障害認定日や、事後重症の請求日など)か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません(障害の程度が明らかに重くなったと省令で定める場合は例外があります)。
20歳前の傷病による障害基礎年金は、本人の所得が一定の額を超えると、支給が制限されます。くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)、「20歳前に初診日がある場合(20歳前障害)はどうなりますか?」(Q15)、「20歳前障害には所得制限がありますか?」(Q65)をご覧ください。
ご家族の方へ
発達障害の方は、ご本人が手続きを進めるのが難しいこともあります。当センターの事例でも、ご本人だけでの対応が難しく、ご家族に連れられて来所された事例や、お母様がLINEで連絡された事例があります(事例、事例)。ご本人の同意があれば、ご家族だけでも、当センターにご相談いただけます。ご相談の前に、ご本人にお伝えください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
発達障害の受給事例
発達障害で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHD)で引きこもり状態に|幼少期からの症状を整理し障害年金を請求した事例
- 55歳で発達障害と診断を受け、医師から障害年金の受給を勧められ手続き委任を受けた事例
- 通院中断があっても大丈夫?20歳直前の相談から発達障害で障害年金受給できた事例
- 同じ会社で働き続けることが出来ず転職を繰り返した。ネットで大人の発達障害を見て心療内科を受診し、医師から障害年金を勧められた事例
- 発達障害・双極性障害により自分を傷つけ家族のサポートが欠かせない。障害基礎年金2級を受給した事例
自閉症、ADHDの事例は、それぞれの記事にまとめています。事例は、受給をお約束するものではありません。同じ診断名でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
関連するコラム・Q&A:
- 発達障害で仕事ができないと感じるときと障害年金の活用
- 知的障害と発達障害の違いとは?特徴と支援の考え方、障害年金にも触れて解説
- スペクトラムの意味とは?発達障害と障害年金のリアルな関係
- 学習障害とは?発達障害の症状と障害年金の受給条件
- ディスレクシア(読字障害)とは?発達障害の症状と障害年金の受給条件
制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















