結論:双極性障害でも、障害年金を受け取れることがあります
双極性障害(躁うつ病)は、障害年金の対象になる病気です。ただし、病名があるだけで受け取れるわけではありません。障害年金は、病名ではなく、病気によって日常生活や仕事がどのくらい制限されているかで決まります。同じ双極性障害でも、受け取れる方と受け取れない方がいます。
受け取るための条件は、大きく3つです。初診日(双極性障害について、初めて医師の診療を受けた日。病名が付く前に、その症状である不眠などで内科を受診した日が初診日になることもあります)に、国民年金か厚生年金に加入していたこと。初診日の前日までの保険料の納付状況が要件を満たしていること(20歳前で、年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、この2つは問われません)。そして、障害認定日(原則として初診日から1年6か月後)か、その後65歳の誕生日の前々日までに、障害の状態が等級に当たっていることです。
双極性障害は、気分が高ぶる時期(躁状態)と、落ち込む時期(うつ状態)を繰り返します。働けた時期がある、今は落ち着いている、というだけで、あきらめる必要はありません。この記事では、双極性障害で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、受け取れるかどうかの考え方、準備するもの、注意点を順番に説明します。
双極性障害で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。自営業やフリーランス、学生などで国民年金に加入していた期間に初診日があれば、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。20歳になる前で、年金制度に加入していなかった期間に初診日がある場合も、障害基礎年金の対象になります。この場合は保険料の納付は問われませんが、本人の所得による支給制限があります(20歳前でも、会社員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、厚生年金の期間として扱われます)。
初診日が、厚生年金と国民年金のどちらの期間かで、結果が変わります。3級は障害厚生年金だけの等級のため、国民年金の期間に初診日がある方は、1級か2級に当たらなければ受け取れません。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。原則として、初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)に、障害等級(1級・2級、厚生年金の場合は3級まで)に当たる状態であることが必要です。その日に等級に当たらなくても、その後に症状が重くなって当たるようになれば、そのときに請求する方法があります。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。双極性障害の扱いは、「双極性障害(躁うつ病)は障害年金の対象になりますか?」(Q35)にまとめています。
双極性障害は、どのように等級が判断されるのか
双極性障害は、障害認定基準の「精神の障害」のなかで、うつ病と同じ、気分(感情)障害として扱われます。診断書や、ご本人(ご家族)が書く病歴・就労状況等申立書をもとに、日本年金機構が審査します。審査では、症状の強さだけでなく、日常生活でどのくらい支援が必要か、仕事や家事にどのような影響が出ているかが見られます。
認定基準では、気分(感情)障害は「本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すもの」とされています。そのため、現在の症状だけで認定するのは不十分であり、症状の経過と、それによる日常生活活動等の状態を十分に考慮する、とされています。診断書に書かれた時点の状態だけでなく、病気の経過全体の中で、どのような状態が続いてきたかが大切です。
等級のおおまかな考え方は、次のとおりです。1級は、日常生活の用を弁ずることができない程度、つまり他人の介助を受けなければ、ほとんど自分の用を足せない程度です。2級は、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度です。3級は、労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、および、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものです。
気分(感情)障害については、認定基準に次のような例示があります。1級は、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの。2級は、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの。3級は、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるものです(いずれも一部の例示です)。
診断書(精神の障害用)には、日常生活能力の程度(5段階)と、日常生活能力の判定(7つの場面について、それぞれ4段階で評価するもの)が書かれます。これらは等級を考えるときの目安になりますが、数字だけで決まるわけではありません。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)と、「うつ病でも障害年金3級になりますか?」(Q33)をご覧ください。
働いたことがあっても、働いていても、受け取れますか
働いていることや、働いたことがあることだけで、対象外になることはありません。審査では、仕事の種類や内容、勤務の日数や時間、職場から受けている配慮や援助、同僚との意思疎通の状況などが確認されます。
当センターの事例には、次のようなものがあります。
- 障害者雇用で、週3日の短時間勤務をしていた30代の女性の事例です。欠勤や早退が多く、安定して働くのが難しい状態で、家事・育児・保育園との連絡は、ご主人が主に担っていました。障害者雇用で働いていても、ご主人の支援がなければ日常生活を維持するのが難しいことが伝わるように整理して請求し、初回で障害厚生年金3級(年額約61万円)が決まりました(事例)。
- 障害者雇用で一般企業に就労している40代の男性の事例です。現在の診断書の就労欄が一般雇用になっていたため、障害者雇用の実態に合わせて訂正を依頼し、申立書には、職場での人間関係の悩みや、家事が手につかない状態を書いて、障害厚生年金3級(年額約58万円)が決まりました(事例)。
- 子どもを育てながら、初診から約1年半後の認定日のころは就労していた40代の女性の事例です。その後、症状が悪化して退職し、事後重症請求で、障害厚生年金2級(年額約150万円)が決まりました(事例)。
働いている場合の判断は、働き方や、職場で受けている援助の内容によって大きく変わります。個別の状況によって結論は変わりますので、あきらめる前にご相談ください。くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
初診日の確認が、最初の大切な作業です
障害年金の申請では、初診日がいつかを証明することが、最初の大きな作業になります。双極性障害は、不眠や気分の落ち込みで、最初に内科などを受診して、そのあとに精神科や心療内科につながることがあります。また、長年の通院の間に、転院を重ねたり、初診の医院が閉院したりすることもあります。当センターの事例にも、次のようなものがありました。
- 本人は、認定日のころに通院していた病院が初診だと思っていた40代の男性の事例です。病院に確認したところ、不眠で受診した内科が初診だとわかりました。その内科のカルテが残っていたため、受診状況等証明書を取得できました(事例)。
- 25年前から心療内科に通院し、初診の医院が4年前に閉院していた50代の女性の事例です。初診の証明は取得できませんでしたが、初診日が記載された診察券を持っていました。2番目のクリニックで取得した受診状況等証明書に、初診の病院名が記載されていたことなどから、初診日が特定されたと考えられました(事例)。
- 20年以上前から心療内科に通院し、これまでに合計5回転院した40代の女性の事例です。初診の医療機関に約20年前のカルテが残っていたため、受診状況等証明書を取得できました(事例)。
初診日は、病名が付いた日とは限りません。双極性障害と診断される前に、その症状である不眠や気分の落ち込みで内科などを受診していれば、その日が初診日になることがあります。また、別の病気があり、その病気がなかったら後の病気が起こらなかったであろう、という関係(相当因果関係)が認められる場合は、前の病気で初めて受診した日が初診日になります。どちらに当たるかは日本年金機構が個別に判断するもので、医師の意見があれば必ず認められるわけではありません。
初診日の証明には、初めて受診した医療機関に書いてもらう「受診状況等証明書」を使います。くわしくは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
診断書で気をつけること
診断書は、現在の主治医に、精神の障害用の所定の様式(様式第120号の4)で書いてもらいます。診断書は、受給できるかどうかを大きく左右する書類です。
気をつけたいのは、診察室で話している短い時間の様子と、ご自宅での実際の生活に、差があることです。双極性障害は症状に波があるため、診察のときに調子がよいと、実際の生活の困難さよりも軽く書かれることがあります。当センターの事例には、既存の診断書に一部「軽度」と評価する記載があり、実際の生活上の困難さと離れていたため、現在の生活状況を文書にまとめて、主治医に診断書の修正を依頼した事例があります。主治医は応じてくれました(事例)。
日常生活でできないこと、困っていること、状態の悪い時期の様子、家族や周囲から受けている援助を、メモにして主治医に渡す方法があります。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
病歴・就労状況等申立書では、波のある日常を具体的に書きます
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの経過と、仕事や日常生活の状況を書く書類です。診断書は医師が書き、申立書はご本人(ご家族)が書くため、診断書だけでは伝わらない日常の様子を補う役割があります。診断書と矛盾する内容になっていないか、調子の悪いときの状態もきちんと書けているかが、大切なポイントです。
通院が長くなると、経過の記憶があいまいになることがあります。当センターの事例には、診断書を取得したあと、申立書が書けずに手続きが止まっていた20代の男性の事例があります。面談で症状の経過と生活状況を丁寧に聞き取り、記憶があいまいな部分は家族に補ってもらいながら、申立書を作成しました。契約後1か月以内に申請して、障害基礎年金2級(年額約80万円)が決まりました(事例)。
当センターの事例では、次のような内容を、具体的な場面とあわせて書いています。
- 子どもを育てながら、子どもの学校のことに関わることができない状態(事例)
- 子育てや家事を頑張ってきたが、ここ数年で体調が悪化し、家事・買い物・通院・服薬のすべてを家族に頼っていること(事例)
- 職場での人間関係の悩みや、家事が手につかない状態(事例)
「できない」だけでなく、どんな場面でどう困っているかが伝わるように整理することが大切です。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。障害認定日のころに受診していて、診断書を書いてもらえることが必要です。
当センターの事例には、初診が約8年前の40代の男性で、障害認定日のころは会社に在籍しながら長期の休業を繰り返していた方がいます。障害認定日の状態で障害厚生年金3級が認められて、さかのぼり分として約330万円を受け取り、請求した時点の状態では障害厚生年金2級(年額約140万円)と認められました。認定日の診断書も現在の診断書も、カルテが残っていたため作成してもらえました(事例)。
障害認定日のころに診断書を書いてもらえない場合や、そのころは症状が安定していた場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。認定日のころの症状を病院に確認したところ、当時は症状が安定していたとの回答だったため、事後重症請求だけで申請した事例もあります(事例)。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。受け取れることが決まると、年金証書が届き、1〜2か月後ごろに最初の振込が始まります。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日(障害認定日や、事後重症の請求日など)か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません(障害の程度が明らかに重くなったと省令で定める場合は例外があります)。
当センターの事例には、初回の請求で障害厚生年金3級が決まったあと、病状が改善せず、障害者雇用の仕事を退職し、家事・育児に全面的な支援が必要な状態になったため、額改定請求をして障害厚生年金2級が認められた事例があります(事例)。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
ご家族の方へ
双極性障害の方ご本人が、手続きを進める余裕がないこともあります。当センターの事例にも、障害年金の書類を年金事務所で受け取ったあと、体調不良のため手続きを進められずに、数年間そのままになっていた方がいました(事例)。また、最初の連絡がお父様からで、父娘で一緒に来所した事例や、家族が年金事務所で書類を受け取り、主治医に診断書を依頼するなど準備を進めた事例があります(事例、事例)。ご本人の同意があれば、ご家族だけでも、当センターにご相談いただけます。ご相談の前に、ご本人にお伝えください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
双極性障害の受給事例
双極性障害で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 【双極性障害】障害年金の書類を受け取ったまま数年間請求できず放置。初回請求で3級、その後2級へ額改定された事例
- 双極性障害で認定日の状態は3級(遡及請求)、請求時点の状態は2級に改定されたケース
- 双極性障害により障害厚生年金2級、年間約150万円決定した事例
- 20年以上通院を続けた双極性障害 家族の支えと丁寧な申立書で障害基礎年金2級が認められた事例
- 双極性障害で診断書取得済み。申立書が書けずに申請を断念しかけていたが、フリーペーパーの広告で弊社を知り、契約後1か月以内に申請をした事例
- 家事育児で疲弊し、双極性障害で障害基礎年金2級が決定した事例
- 双極性障害で障害厚生年金3級が決定した事例
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ病名でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















