結論:感音性難聴でも、障害年金を受け取れることがあります
感音性難聴は、障害年金の対象になる病気です。ただし、病名があるだけで受け取れるわけではありません。感音性難聴は、耳の奥の内耳や、聴神経に原因があって、聞こえにくくなる難聴です。障害年金では、聴力検査の数値で、障害の程度が判断されます。
受け取るための条件は、大きく3つです。初診日(難聴で初めて医師の診療を受けた日)に、国民年金か厚生年金に加入していたこと。初診日の前日までの保険料の納付状況が要件を満たしていること。そして、障害認定日(原則として初診日から1年6か月後。20歳前に初診日がある場合は、障害認定日か20歳に達した日のいずれか遅いほう)か、その後65歳になるまでに、聴力が等級に当たっていることです(後者の場合の請求は、65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります)。
感音性難聴は、薬や手術で治りにくく、ゆっくり進むことが多い病気です。そのため、初診日が20年以上前になる方も少なくありません。この記事では、感音性難聴で障害年金を考えている方のために、受け取れるかどうかの考え方、準備するもの、注意点を説明します。
感音性難聴で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです(20歳前や、日本に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合を除きます。老齢基礎年金を繰り上げて受給している方は除きます)。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。自営業やフリーランス、学生などで国民年金に加入していた期間に初診日があれば、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって、初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。20歳前に初診日がある場合は、納付要件は問われません(ただし、20歳前の傷病による障害基礎年金には、本人の前年の所得が一定額を超えると、半額または全額が支給停止になる所得制限があります)。
3つめは、障害の程度です。感音性難聴の場合は、聴力検査の結果が、等級の目安になります。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
聴力と語音明瞭度で、どのように等級が判断されるのか
障害年金では、オージオメータで測る純音聴力レベル値と、ことばの聞き取りの正確さを示す最良語音明瞭度で、聴覚の障害の程度を判断します。目安は次のとおりです(日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3第1章第2節)。
- 1級:両耳の平均純音聴力レベル値が100デシベル以上
- 2級:両耳が90デシベル以上、または、両耳が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下
- 3級(障害厚生年金のみ):両耳が70デシベル以上、または、両耳が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下
- 障害手当金(初診日に厚生年金に加入していた方の一時金):一耳が80デシベル以上
平均純音聴力レベル値は、500・1000・2000ヘルツの値をa・b・cとして、(a+2b+c)÷4で計算します。障害年金を受けていない方が1級にあたる診断を受けるときは、聴性脳幹反応検査(ABR)などの他覚的な検査結果と、その記録のコピーが必要です。最良語音明瞭度は、聴力レベルが90デシベルに満たない場合に記入されます。
当センターの事例には、認定日のころの診断書に「最良語音明瞭度」の記入がなく、病院に確認しても、当時はその検査をしていなかったため記入できず、聴力のみでは年金相当とならないために、さかのぼっての請求が認められず、事後重症請求のみ3級に決まった事例があります。検査していないものは、あとから記入できません。
そのため、診断書を書いてもらう病院には、語音明瞭度の検査ができる設備があるかどうかが大切になります。当センターの事例では、より上の等級に当たる可能性があるときは、明瞭度検査などを行える専門の機械がある病院が必要になるため、そのような病院を紹介した事例があります。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。
初診日の確認が、最初の大切な作業です
障害年金の申請では、初診日がいつかを証明することが、最初の大きな作業になります。感音性難聴は、ゆっくり進行したり、生まれつきだったりして、初診日が何十年も前になることがあります。病院にカルテが残っていないことも多く、当センターの事例にも、次のようなものがありました。
初診がすでに20年近く前で、カルテが廃棄されていたものの、パソコンのデータに初診日だけが残っていた事例では、受診状況等証明書が添付できない申立書を作り、次の病院で受診状況等証明書を作成してもらって、障害厚生年金3級が決まりました。23年前に総合病院で受診して補聴器を作り、その後は受診していなかった事例でも、現在の病院に当時のカルテはなかったものの、受診した日付のデータが残っており、診断書の初診所見に「詳細はわからないものの受診歴あり」と記載してもらって、初診が認められ、障害厚生年金3級が決まりました。
出生からの難聴で、初診が4〜5歳のころという事例では、50年以上前の証明が取れませんでした。当時の同僚・上司の第三者証明、3歳のころに児童相談所に相談した際の心理判定書、学生時代の補聴器の使用状況を示す資料などをそろえ、初診が20歳前であることを強調して、障害基礎年金2級が決まりました。
初診が思ったより古かった事例もあります。1年前に受診したのが初めてだと思っていたものの、20年以上前に障害者手帳を作っており、手帳を作るときの診断書が役場に残っていたので、それを初診の証明にして、障害基礎年金2級が決まりました。
くわしくは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
認定日請求と事後重症請求
障害認定日(初診日から1年6か月が過ぎた日)のころに受診していて、そのころの診断書を書いてもらえれば、障害認定日にさかのぼって請求(遡及請求)できます。認定日のころに受診していなかった場合は、現在の状態を書いた診断書で、請求した月の翌月分から受け取る請求(事後重症請求)になります。
当センターの事例には、障害認定日の時点で受診していなかったため、事後重症請求になった事例が複数あります。事後重症請求では、現在の症状の重さを、診断書と検査の結果で正確に示すことが大切です。契約当日に、受診状況等証明書と現在の診断書の作成を医療機関に依頼し、契約から3週間で申請まで進めて、障害厚生年金2級が決まった事例があります。
さかのぼって受け取れるかどうかは、認定日のころの検査の結果で決まります。先ほどの事例では、認定日のころの診断書に語音明瞭度の記入がなく、聴力の値だけでは等級に当たらなかったため、さかのぼりは認められませんでした。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
片耳だけが聞こえない場合
片耳だけの難聴は、両耳の聴力で定められている3級までの聴覚の基準には当たりません。症状が固定していれば、障害手当金の対象になることがあります。
障害手当金は、初診日に厚生年金に加入していて、初診日の前日に保険料の納付要件を満たし、初診日から5年以内に治って(症状が固定して)いる方が、障害厚生年金を受け取れる状態よりも軽い場合の一時金です。額は、報酬比例の年金額の2倍で、令和8年度の最低保障額は1,271,000円(昭和31年4月2日以後生まれの方)です。請求には5年の時効があります。
当センターの事例には、聴神経腫瘍の手術で片耳の聴力が失われ、障害手当金が約119万円(一時金。決定当時の額)で決まった事例があります。診断書が症状固定になっていなかったため、手当金に該当しないものになっていて、すぐに修正してもらいました。手続きが整ったのは、症状固定から5年が経つ約2週間前で、時効が成立する直前に申請できました。
難聴と、ほかの病気が重なっている場合
難聴と、統合失調症のような別の病気が重なっている場合は、それぞれの障害の程度を「併合判定参考表」に当てはめ、あわせた等級を決めます(障害認定基準 第3第2章)。たとえば、両耳90デシベル以上(2級)と、日常生活が著しい制限を受ける程度の精神の障害(2級)をあわせると、1級になります。当センターの事例では、生まれつきの難聴と統合失調症を別々に請求し、先に難聴で障害基礎年金2級が決まり、その1か月後に統合失調症も認められて、あわせて障害厚生年金1級(年間約156万円)になりました。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。聴覚障害は、聴力の検査の数値が判断の中心になります。20歳前に初診日がある方の障害基礎年金には、本人の前年の所得による支給停止がある点にご注意ください。当センターの事例には、現在も就労していて、聞こえづらい中でもメール・LINEでの手続きで請求を進めた方が、障害厚生年金3級(事後重症請求)になった事例(初診日に共済組合に加入していた方)や、「指示を一度で理解できない」「職場に迷惑をかけていると感じる」など、就労面の困りごとを申立書に詳しく書いて、障害厚生年金2級が決まった事例があります。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)と「フルタイムで働いていても障害年金はもらえますか?」(Q54)をご覧ください。
診断書は、何科の医師に、どう書いてもらうか
診断書は、日本年金機構の「診断書(聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下機能・音声又は言語機能の障害用)」の様式を使います。オージオメータによる聴力検査の結果を書いてもらい、聴力レベルが90デシベルに満たない場合は、語音明瞭度の検査結果も書いてもらいます。診断書は医師または歯科医師が書くもので、診療科は限られていませんが、検査ができる設備のある病院を選ぶことが大切です。
診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
障害者手帳との関係
障害年金と、聴覚障害の障害者手帳(身体障害者手帳)は、別の制度です。手帳があることと、障害年金を受け取れることは別で、手帳を持っていなくても、障害年金の申請はできます。くわしくは、100の質問の「障害者手帳を持っていれば障害年金をもらえますか?」(Q7)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。受け取れることが決まると、年金証書が届き、1〜2か月後ごろに最初の振込が始まります。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。聴力が悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。ただし原則として、年金を受ける権利が発生した日(受給権を取得した日)や、障害の程度の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。両耳の聴力レベルが90デシベル以上になった場合など、省令で定める状態にあたるときは、1年を待たずに請求できます。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。聞こえにくい方も、メールやLINEで手続きを進められます。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。このほか、診断書の作成料(医療機関に支払う実費)は、受給できたかどうかにかかわらずご負担いただきます。医師への同行などをご依頼いただく場合は、日当がかかることがあります(100の質問Q90)。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定では、1分ほどの入力で、受給の可能性について社会保険労務士の判定を受けられます(結果は目安で、受給をお約束するものではありません)。
感音性難聴の受給事例
感音性難聴などの難聴で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 両側感音難聴 1年前の相談からラインで手続き依頼、迅速対応で障害厚生年金2級に認定された事例
- 23年前に補聴器を購入して受診せずその後悪化。両感音難聴で障害年金3級、年間約58万円が決定した事例
- カルテが破棄されていてパソコンデータで初診日だけしか分からなかったが感音性難聴で障害厚生年金3級取得、年間約58万円を受給できたケース
- 難聴で障害厚生年金3級受給、年間約90万円受給したケース
- 50年以上前の初診日の証明が取れず第三者証明により初診日を特定し障害基礎年金2級を取得、年間約78万円を受給できたケース
- 難聴で障害基礎年金2級を取得、年間約78万円を受給できたケース
- 難聴 統合失調症併合請求により障害年金1級が決定した事例
- 片耳難聴により障害手当金の受給が決定した事例
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ病名でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
関連するコラム・Q&A:
- 感音性難聴の聞こえ方とは?日常の困りごとと障害年金の対象になるケースを解説
- 片耳聞こえないだけでは障害年金は無理?障害手当金との違いを解説
- 感音性難聴で低音が聞こえにくい理由とその対策 感音性難聴は障害年金の対象です。
- 本日は感音性難聴の方と無料相談会で面談しました。
制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」、診断書の記入上の注意などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















