結論:ペースメーカーを入れた方は、障害年金を受け取れることがあります
心臓ペースメーカーを入れた方は、障害年金の対象になることがあります。障害認定基準(循環器疾患)では、心臓ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を装着した場合は3級、心臓再同期医療機器(CRT)や、除細動機能つきの心臓再同期医療機器(CRT-D)を装着した場合は2級、とされています。
ただし、3級は障害厚生年金だけの等級です。初診日(心臓の病気で初めて医師の診療を受けた日)に厚生年金に加入していた方は、ペースメーカーやICDを装着したことで、3級の基準に当たります(ほかに保険料の納付などの条件があります)。初診日に国民年金に加入していた方や、初診日が20歳前で厚生年金に加入していなかった方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象のため3級がなく、ペースメーカーやICDだけでは対象になりません。ただし、心不全の症状や検査の所見などで2級の基準に当たれば、対象になります。CRTやCRT-Dは2級の基準のため、国民年金の方も対象になります。
この記事は、ペースメーカーを入れた方、入れることを勧められた方と、そのご家族のために、受け取れるかどうかの考え方と、準備するもの、注意点を説明します。
ペースメーカーで障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、3級の障害厚生年金の対象になります。国民年金の期間に初診日がある方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。装置の種類で、等級の目安が分かれます。
- ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器):3級。
- CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動機能つきのCRT):2級。
ペースメーカーやICDを入れたあとも、心電図で重い不整脈の所見があり、日常生活の状態が一般状態区分表の「ウ」(軽労働はできないが、日中の50%以上は起きている)または「エ」に当たる場合などは、2級に当たることがあります(障害認定基準 第11節「難治性不整脈」の2級の例)。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。心臓の病気全般の扱いは、「心臓の病気(ペースメーカー・人工弁・心筋症)は対象になりますか?」(Q47)にまとめています。
初診日の年金制度で、結果が変わります
ペースメーカーとICDは、3級です。そのため、初診日にどの年金制度に加入していたかで、結果が分かれます。
- 初診日に厚生年金に加入していた方:ペースメーカー・ICDを装着したことで、3級(障害厚生年金)の基準に当たります。
- 初診日に国民年金に加入していた方、または初診日が20歳前で厚生年金に加入していなかった方:3級がないため、ペースメーカー・ICDだけでは対象になりません。ただし、心不全の症状や検査の所見などで2級の基準に当たれば、対象になります。CRT・CRT-Dなら2級の基準に当たるため、対象になります。
当センターのQ&Aには、次のような相談があります。
- 17歳のときに病院を受診し、ICDを入れた方。初診日が20歳前のため、対象になるのは障害基礎年金(1級・2級)で、ICDの3級では対象にならない、とお答えしました。ただし、CRT・CRT-Dを装着した場合は、2級の可能性が出てきます(Q&A)。
- 高校生のころにICDの手術を受けた方。初診日が20歳前(厚生年金には未加入)で、障害基礎年金の対象になるため、ICDの3級では対象にならない、とお答えしました(Q&A)。
- 自営業で、初診日が国民年金だった方。普通のペースメーカーでは3級のため対象になりませんが、CRT-Dを入れたため、2級の基準に当たり、対象になる、とお答えしました(Q&A)。
配偶者の扶養に入っている方は、ご自身が厚生年金に加入しているのではなく、国民年金の第3号被保険者です。初診日にどちらだったかを、先に確認してください。
障害認定日は、ペースメーカーなどを装着した日(初診日から1年6か月以内の場合)
障害年金の障害認定日は、原則として、初診日から1年6か月が過ぎた日です。ペースメーカーとICDには例外があり、障害認定基準(第11節「心疾患による障害」)は、ペースメーカー、ICD、人工弁を装着した場合は、装着した日(初診日から1年6か月を超える場合を除きます)を障害認定日としています。
CRT・CRT-Dは、この例外の対象としては書かれていません。障害認定基準では、心臓移植・人工心臓などと同じ「重症心不全」の項目で、手術のあとは2級に認定するとされています。当センターの事例(CRT-D)では、手術日が認定日として扱われましたが、ご自身の場合の認定日は、初診日と手術日の時期によって変わるため、個別に確認が必要です。
ペースメーカーやICDを、初診日から1年6か月が過ぎてから装着した場合は、この例外は使えず、障害認定日は初診日から1年6か月が過ぎた日のままです。その時点で等級に当たっていなかった場合は、装着のあとに「事後重症」として請求することになります。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
当センターの事例には、次のようなものがあります。
- 慢性心不全の40代の男性の事例です。浮腫と息苦しさで受診して、1か月半でCRT-Dの手術を受け、手術日が認定日になりました。診断書には、CRT-Dの埋め込み日を書いてもらい、その翌月分から、障害基礎年金2級(年額約78万円)が決まりました。10か月分をさかのぼって受け取れました(事例)。
- 洞不全症候群でペースメーカーを入れた50代の男性の事例です。5年前に心筋梗塞と分かり、治療を受けていましたが、転勤のあと、しばらく通院していない時期がありました。最近、症状が悪化してペースメーカーを入れました。障害認定日のころはどこの病院にも通っていなかったため、さかのぼっての請求はできず、現在の症状で請求し、障害厚生年金3級(年額約100万円)が決まっています(事例)。
障害認定日のくわしい説明は、100の質問の「障害認定日はいつになりますか?」(Q12)と「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
体外式(一時的)のペースメーカーは
手術で体内に埋め込むペースメーカーのほかに、一時的に体の外から電気刺激を与える「体外式ペースメーカー」があります。障害認定基準には、体外式(一時的)のペースメーカーについての定めはありません。体外式は、緊急時や、埋め込む前の一時的な処置として使うことが多く、障害認定日の時点で外れている場合は、「ペースメーカーを装着したもの」としての3級には当たらず、その時点の心臓の症状や検査の結果で判断されることになると考えられます。くわしくは、ペースメーカー(体外式)でも障害年金はもらえる?申請のポイントと注意点を解説をご覧ください。
ペースメーカーが必要になった原因の病気
ペースメーカーが必要になる原因には、洞不全症候群、房室ブロック、心筋梗塞のあとの不整脈、心不全などがあります。初診日は、原因になった病気で、初めて医師の診療を受けた日です。ペースメーカーを入れた日ではありません。
- 洞不全症候群でも障害年金はもらえる?美川憲一さんの公表から学ぶ受給のポイント
- 洞機能不全症候群とは?原因・症状・治療法と障害年金の受給条件を徹底解説
- 完全房室ブロックの治療と障害年金の受給資格を詳しく紹介
- ペースメーカーで障害者手帳を取得!障害年金も受け取るための条件とは?
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。心臓の病気では、「障害年金の初診日に関する調査票【心臓の病気用】」を使う場合があります。
診断書と申立書で気をつけること
診断書は、「循環器疾患の障害用」(様式第120号の6-(1))を使います。書く医師は、心臓の治療を受けている主治医に依頼してください。診断書には、装着した装置の種類(ペースメーカー、ICD、CRT、CRT-D)と、装着した日を、はっきり書いてもらうことが大切です。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。
申立書(病歴・就労状況等申立書)には、装置を入れたあとの生活の不便を具体的に書きます。当センターの事例(事例)では、装置を入れて症状は落ち着いたけれど、以前のように元気に働くことができず悩んでいる、ということを書きました。
くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。障害認定基準では、ペースメーカー・ICDを装着したものが3級の例として挙げられており、働いているかどうかは条件になっていません。障害年金は、20歳前に初診日がある障害基礎年金を除いて、収入による支給制限はありません。当センターの事例にも、毎日仕事をしながら、ペースメーカーを入れて障害厚生年金3級が決まった方がいます(事例)。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。障害認定基準の心疾患の節には、ペースメーカー・ICDを装着した場合の更新について特別の定めはありません。一方、CRT・CRT-Dは、手術のあとは2級に認定したうえで、1〜2年程度の経過をみて症状が安定しているときは、症状や検査の結果、日常生活の状態をみて、等級を認定し直す、とされています。そのため、CRT・CRT-Dで2級になった方は、次の診断書の内容によって等級が変わることがあります。更新があるかどうか(有期認定か永久認定か)は、年金証書の「次回診断書提出年月」の欄で確認できます。悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。このほか、診断書の作成料(医療機関に支払う実費)は、受給できたかどうかにかかわらずご負担いただきます。医師への同行などをご依頼いただく場合は、日当がかかることがあります(100の質問Q90)。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定では、1分ほどの入力で、受給の可能性について社会保険労務士の判定を受けられます(結果は目安で、受給をお約束するものではありません)。
ペースメーカーの受給事例
ペースメーカーなどで障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
事例は、受給をお約束するものではありません。同じペースメーカーでも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
関連する柱ページ:
制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















