結論:人工弁を入れた方は、障害年金を受け取れることがあります
心臓の弁の病気(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症など)で人工弁を入れた方は、障害年金の対象になることがあります。障害認定基準(循環器疾患)では、人工弁を装着した場合は、原則として3級に当たる、とされています。
ただし、3級は障害厚生年金だけの等級です。初診日(心臓の病気で初めて医師の診療を受けた日)に厚生年金に加入していたかどうかで、結果が大きく変わります。国民年金の期間に初診日がある方は、3級がないため、人工弁を入れていても、2級に当たらなければ受け取れません。
この記事では、人工弁で障害年金を考えている方のために、受け取れるかどうかの考え方と、準備するもの、注意点を説明します。
人工弁で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、3級の障害厚生年金の対象になります。国民年金の期間に初診日がある方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。人工弁を装着した場合は、原則として3級です。装着したあとも、心不全の症状や検査の所見が強い場合は、2級以上に当たることがあります。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。心臓の病気全般の扱いは、「心臓の病気(ペースメーカー・人工弁・心筋症)は対象になりますか?」(Q47)にまとめています。
等級の目安:3級が基本、2級以上になるのは
当サイトの「心臓の障害(循環器障害)の障害認定基準」(ページ)では、弁疾患の等級の例を次のように示しています。
- 3級:人工弁を装着したもの
- 2級:人工弁を装着する手術から6か月以上たっても、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表の「ウ」(歩行や身のまわりのことはできるが、軽労働はできない)または「エ」(日中の50%以上は就床している)に当たるもの
- 1級:病状が重く、安静にしていても心不全の症状(NYHA心機能分類のクラスⅣ)があり、かつ、一般状態区分表の「オ」(身のまわりのこともできず常に介助が必要で、終日ベッドで過ごしている)に当たるもの
診断書には、一般状態区分、心不全の症状、心エコーや心電図などの検査の所見が書かれます。
事例(事例)では、診断書に人工弁置換がはっきり書かれていることを確認したうえで、申立書には、手術後も疲れやすいことや、食事制限・日常生活の不便があることを書いて、3級で請求しました。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。
障害認定日は、人工弁を入れた日(初診日から1年6か月以内の場合)
障害年金の障害認定日は、原則として、初診日から1年6か月が過ぎた日です。人工弁には例外があり(障害認定基準 第11節「心疾患による障害」)、初診日から1年6か月以内に人工弁を装着した場合は、装着した日が障害認定日になります。
初診日から1年6か月が過ぎてから人工弁を入れた場合は、この例外は使えず、障害認定日は初診日から1年6か月が過ぎた日のままです。その時点で等級に当たっていなかった場合は、手術のあとに「事後重症」として請求することになります。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
障害認定日に障害の状態に当たっていた場合は、障害認定日にさかのぼって請求できます(遡及請求。時効のため、受け取れるのは5年分までです)。
当センターの事例には、次のようなものがあります。
- 僧帽弁閉鎖不全症などで人工弁の手術を受けた40代の女性の事例では、手術が平成27年で、さかのぼって請求できたため、認定日請求を選びました。認定日用と現在用の診断書の2通を用意し、障害厚生年金3級と、5年分のさかのぼり(約277万円)が認められました(事例)。
- 初診から約1年半後の認定日ごろは症状が軽く、その後に人工弁置換を受けた事例では、さかのぼれないため、現在の症状で事後重症請求をして、障害厚生年金3級が決まりました(事例、事例)。
障害認定日のくわしい説明は、100の質問の「障害認定日はいつになりますか?」(Q12)と「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
初診日の確認が、最初の大切な作業です
当センターの事例でも、健康診断で異常を指摘されてから何年も経過観察を続け、手術に至った方がいます。このような場合、初診日が古くなります。また、子どものころの手術や、ずっと前の受診が、初診日に当たるかどうかが問題になることがあります。当センターの事例にも、次のようなものがありました。
- 本人は最初に受診した病院が初診日だと考えていましたが、取得した受診状況等証明書に前の医師の紹介状のコピーが含まれていました。調べたところ、実際の初診は別の診療所で、その記録が残っていました。初診日を特定できたことで、人工弁装着の障害厚生年金3級と、5年分のさかのぼり(約313万円)が認められました(事例)。
- 25年前に1回だけ受診し、心肥大が分かった病院に、カルテが残っていて、受診状況等証明書を作成してもらえた事例があります(事例)。
- 幼少期にファロー四徴症の手術を受け、その後35年間は受診せずに元気に生活していた方が、健康診断で異常を指摘され、人工弁の手術を受けた事例では、健康診断後の受診日が初診日と認められ、障害厚生年金3級が決まりました(事例)。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。心臓の病気では、「障害年金の初診日に関する調査票【心臓の病気用】」を使う場合があります。
診断書は、何科の医師に、どう書いてもらうか
診断書は、「循環器疾患の障害用」(様式第120号の6-(1))を使います。書く医師は、心臓の治療を受けている主治医に依頼してください。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。
現在かかっている病院で診断書を断られることもあります。当センターの事例では、アルコール依存症の治療で受診している病院から診断書の作成を断られたため、手術を受けた病院に依頼し、現在の症状を確認するための受診を経て、診断書を作成してもらいました(事例)。
くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
申立書には、診断書だけでは伝わらない不便を書きます
人工弁を入れたあとの体調や生活の不便は、診断書の欄だけでは伝わりにくいことがあります。申立書(病歴・就労状況等申立書)には、日常生活の不便を具体的に書きます。当センターの事例(事例)では、手術後も疲れやすいこと、食事制限や日常生活の不便があることを書きました。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。当センターの事例には、健康診断で大動脈弁狭窄症などが分かり、手術を受けた60代の方が、働きながら障害厚生年金3級(年間約102万円)を受給できた事例があります。障害年金は、20歳前に初診日がある障害基礎年金を除いて、収入による支給制限はありません(事例)。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
障害者手帳との関係
障害年金と、障害者手帳は、別の制度です。手帳があることと、障害年金を受け取れることは別で、手帳を持っていなくても、障害年金の申請はできます。くわしくは、100の質問の「障害者手帳を持っていれば障害年金をもらえますか?」(Q7)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。受け取れることが決まると、年金証書が届き、1〜2か月後ごろに最初の振込が始まります。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。障害認定基準の心疾患の節には、人工弁を装着した場合の更新(再認定)について特別の定めはありません。更新があるかどうか(有期認定か永久認定か)は、年金証書の「次回診断書提出年月」の欄で確認できます。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
人工弁の受給事例
人工弁で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 大動脈弁狭窄症により人工弁置換、障害厚生年金3級が決定した事例
- 大動脈弁閉鎖不全症(人工弁)により障害厚生年金3級が決定した事例。
- 本人の思っている初診日が違い初診日を特定し人工弁装着で障害厚生年金3級を取得、5年遡及約313万円、年間58万円を受給できたケース
- 僧帽弁閉鎖不全症、閉塞性肥大型心筋症による人工弁装着で障害厚生年金3級を取得、5年遡及約277万円、年間58万円を受給できたケース
- 幼少期にファロー四徴症で手術歴あり。35年後の健診で異常がみつかり人工弁置換。健診後の受診日が初診と確定された事例。
- 大動脈弁狭窄症、胸部大動脈瘤で障害厚生年金3級を取得、年間約102万円を取得したケース
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ人工弁でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
関連するコラム・Q&A:
制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一
狭心症全般の考え方(検査所見や一般状態区分で等級が決まることなど)は、狭心症で障害年金はもらえる?でも解説しています。
ペースメーカー全般の考え方(初診日の年金制度で結果が変わることなど)は、ペースメーカーで障害年金はもらえる?でも解説しています。






















