結論:変形性膝関節症は、人工関節を入れたとき、または膝の動きや歩行が大きく制限されているときに、受け取れることがあります
変形性膝関節症で障害年金を受け取れることはあります。ただし、変形性膝関節症という診断名があるだけでは受け取れません。道は大きく2つに分かれます。
- 人工関節を入れた場合:障害認定基準(第7節 肢体の障害 第2 下肢の障害)では、片足または両足の3大関節のうち1関節以上に人工骨頭や人工関節を挿入置換した場合は、3級と認定するとされています(手術のあとも重い障害が残る場合は、上の等級になることがあります)。人工関節についてのくわしい説明は、人工関節で障害年金はもらえる?をご覧ください。
- 人工関節を入れていない場合:膝などの下肢の関節の動き(可動域)、筋力、歩行や立ち座りの状態をもとに、等級が判断されます。
もう1つ大切なのは、年金制度の違いです。3級は障害厚生年金にしかありません。初診日(膝の痛みで初めて医師の診療を受けた日)に厚生年金に加入していた方は、3級の基準に当たれば受け取れます。初診日に国民年金に加入していた方(自営業、無職、配偶者の扶養に入っている主婦・主夫など)は、人工関節を入れただけでは対象にならず、2級以上の基準に当たる必要があります。
この記事は、変形性膝関節症で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、受け取れるかどうかの考え方と、準備するもの、注意点を説明します。
変形性膝関節症で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。国民年金の期間に初診日がある方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。次の節で説明します。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
人工関節を入れていない場合の等級の目安
人工関節を入れていない場合は、下肢の3大関節(股関節、膝関節、足関節)の動き(他動可動域)と筋力、日常生活の動作の状態で判断されます。障害認定基準(第7節 肢体の障害 第2 下肢の障害)では、たとえば次のような状態が、各等級の例として示されています。
- 2級:片方の足で、3大関節のうち2関節以上が全く用を廃している状態(不良肢位で強直している、可動域が健康な側の2分の1以下に制限され、かつ筋力が半減している、または筋力が著しく減っている・消失しているもの)。または、両足とも、3大関節のうちそれぞれ1関節の可動域が参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ筋力が半減している状態。
- 3級(障害厚生年金のみ):片方の足で、3大関節のうち2関節の可動域が健康な側の2分の1以下に制限されている状態。片方の足で、3大関節のうち1関節が不良肢位で強直している状態。両足とも、3大関節のうちそれぞれ1関節の筋力が半減している状態。
可動域は、片方の膝だけに障害がある場合は、健康な側の膝と比べて評価されます。両膝に障害がある場合は、認定基準が示す参考可動域を参考にします。また、可動域だけでなく、筋力、巧緻性、速さ、耐久性も考慮され、片足で立つ、歩く(屋内・屋外)、立ち上がる、階段を上る・下りる、といった日常生活の動作もあわせて見られます。ここに挙げたのは等級の例で、実際には診断書の内容をもとに総合的に判断されます。
当センターの事例には、可動域が決め手になったものがあります。松山市の50代の男性の事例です。両膝の変形性膝関節症で、ご自身で申請して不支給になり、審査請求も認められなかったあと、当センターに相談されました。再請求をしましたが、可動域が広いことを理由に、3級にも満たないとして不支給になりました。不支給の理由が診断書に書かれた症状の程度だったため、審査請求ではなく、あらためて事後重症の請求をすることにしました。その際、主治医に、現在の可動域を改めて測定したうえで診断書を作成していただくようお願いし、作成してもらいました。初診の病院の最も古いレントゲンと、現在の病院の最も新しいレントゲンも提出して、決定まで8か月かかりましたが、障害厚生年金2級(年額約140万円)が決まりました(事例)。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。膝の関節が動かなくなる状態については、膝関節屈曲位拘縮の原因や症状、障害年金の申請方法と注意点と、強直肢位とは?原因・症状から障害年金の認定ポイントまで徹底解説もご覧ください。
人工関節を入れる予定の方は、手術の前に確認を
変形性膝関節症で人工関節の手術を予定している方から、障害年金の対象になるかというご質問をいただくことがあります。当センターは、次のようにお答えしています。
- 初診日に厚生年金に加入していた場合は、人工関節を入れると、障害厚生年金3級の対象になります。
- 初診日に国民年金に加入していた場合は、人工関節を入れただけでは対象になりません。ただし、歩行や階段の昇り降りが困難なほど機能の低下が著しい場合は、2級に当たる可能性があります。
(Q&A)
人工関節は、手術を受けた日が障害認定日になる場合があります(初診日から1年6か月以内の場合)。手術前に、初診日の確認や、初診の病院の記録が残っているかを調べておくと、手続きがスムーズに進みます。人工関節の障害認定日や手続きは、人工関節で障害年金はもらえる?をご覧ください。
初診日の確認が、最初の大切な作業です
初診日は、障害の原因となった病気やけがで、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です(障害認定基準 第1 一般的事項)。ただし、治療の必要がなくなり、普通に社会生活を送っていた期間が相当長く続いたあとで、同じ病気で再び受診した場合は、「社会的治癖」として、再受診の日が初診日と扱われることがあります。社会的治癖は法律の条文にあるものではなく、行政の取扱いや審査の判断の積み重ねによるもので、通院をやめていた期間の長さだけで決まるわけではありません。当時の受診の記録や、その間の生活や仕事の状況などから、個別に判断されます。また、初診日がどちらになるかで、加入していた年金制度や保険料の納付要件の判定も変わるため、どちらの日が初診日になるかは慎重に確認する必要があります。
当センターの事例には、10年前に膝の痛みで整形外科を受診し、3か月の通院で改善して終了、4年後に再び痛みを感じて同じ整形外科を再受診して、総合病院を勧められ、検査のあとすぐに人工関節を入れた60代の男性がいます。初診の整形外科の受診状況等証明書に「初めの受診は改善し受診終了。その4年後に再受診」と書かれていたため、申立書でも4年後の受診日を初診日として申請しました。希望した初診日が認められ、障害厚生年金3級(年額約58万円)と、5年分のさかのぼり(約290万円)が決まっています(事例)。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。初診日は、医師または歯科医師の診療を受けた日です。整骨院・接骨院だけに通っていた日は、初診日になりません。
老齢厚生年金を受けているとき
当センターの事例には、人工関節を入れた60代の女性で、特別支給の老齢厚生年金を受けていた方がいます。障害厚生年金と特別支給の老齢厚生年金は、同時に受け取ることができず、どちらかを選ぶことになります(厚生年金保険法第38条第1項)。この方は、障害厚生年金の請求と同時に「年金受給選択申出書」を提出し、障害厚生年金3級(年額約58万円)が決まりました(事例)。どちらを選ぶほうがよいかは、それぞれの年金額で変わるため、年金事務所で両方の額を確認してから選びます。
診断書と申立書で気をつけること
診断書は、肢体の障害用の様式(様式第120号の3)で、現在の主治医に書いてもらいます。関節の動き(可動域)の計測、筋力、杖や装具の使用、歩行や立ち座り、階段の昇り降りの状態を、具体的に書いてもらうことが大切です。人工関節を入れた場合は、診断書の「人工骨頭・人工関節の装着の状態」の欄に、部位(膝・股など)と手術日を書いてもらいます。なお、日常生活の動作の欄は、杖などの補助用具を使わない状態で記入することになっています。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。
申立書(病歴・就労状況等申立書)には、診断書の欄だけでは伝わらない不便を、具体的に書きます。「階段を一段ずつしか昇れない」「しゃがむことができない」「長い時間立っていられない」など、場面で書くと伝わりやすくなります。
障害年金の申請では、ご自身の症状をすべて書こうとされる方がいます。症状をたくさん書きすぎると、審査する人にとって、どの症状がどこまで悪いのかが分かりにくくなることがあります(当センターの相談事例)。また、障害年金は病気ごとに初診日を確認します。別の病気(たとえば脊柱管狭窠症)も請求の対象にする場合は、その病気の初診日の証明も必要になり、膝の病気との因果関係がなければ、別の病気として扱われます。当センターの事例5640では、再請求のときに、足先がしびれる程度だった脊柱管狭窠症を対象から外し、変形性膝関節症に絞って申請しました。どの病気を請求の対象にするかは、主治医の診断をもとに、障害の程度と初診日の証明の両面から考えます。
くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。肢体の障害は、関節の動きや筋力、歩行の状態が中心に見られます。診断書には、仕事や日常生活での制限(立ち仕事ができない、階段が昇れない、長い距離を歩けないなど)を、具体的に書いてもらいます。なお、3級の基準は「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」と定められているため、仕事でどのような制限を受けているかも大切な情報です。診断書の「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」の欄に、具体的に書いてもらいます。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。当センターの事例には、人工関節を初診から1年半以内に入れていたため、現在の診断書だけでさかのぼって請求でき、5年分が認められたものがあります(前の節の事例6884)。
障害認定日に等級に当たっていなかった場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。当センターの事例(前の節の事例5640)では、審査請求も認められず、再請求も不支給になりましたが、主治医に可動域を改めて測ってもらい、事後重症請求をし直して、2級が決まりました。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
変形性膝関節症の受給事例
変形性膝関節症で障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 両変形性膝関節症で一度不支給になったが再申請で障害厚生年金2級を取得、年間約140万円を受給できたケース
- 右変形性膝関節症による人工関節で障害厚生年金3級を受給、年間約58万円を受給できたケース
- 10年前に膝を痛めてその後改善したが悪化。人工関節を入れて障害厚生年金3級、5年遡及できた事例
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ変形性膝関節症でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















