結論:気管支喘息でも、症状が重ければ障害年金を受け取れることがあります
気管支喘息は、障害年金の対象になる病気です。ただし、喘息と診断されただけでは受け取れません。薬を使って症状が落ち着いている方は、対象になりにくいのが実際です。受け取れる可能性があるのは、発作が頻繁に起こる、薬を使っても症状が治まらない、息苦しさのために日常生活や仕事が大きく制限されている、といった重い状態の方です。気管支喘息は、障害認定基準の「呼吸器疾患」で判断されます。くわしくは、次の節で説明します。
もう1つ大切なのは、年金制度の違いです。3級は障害厚生年金にしかありません。初診日(喘息で初めて医師の診療を受けた日)に厚生年金に加入していた方は、3級の基準に当たれば受け取れます。初診日に国民年金に加入していた方(自営業、無職、パートで厚生年金に入っていない方など)は、2級以上の基準に当たらないと受け取れないため、かなり重い状態でないと難しくなります。
この記事は、気管支喘息で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、受け取れるかどうかの考え方と、準備するもの、注意点を説明します。
気管支喘息で障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。国民年金の期間に初診日がある方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。次の節で説明します。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
障害の程度は、どう判断されるのか
呼吸器疾患の認定では、障害認定基準が定める検査の結果(肺の働きを調べる検査、血液中の酸素の量など)、自覚症状、他覚所見、日常生活の状態や、治療(酸素療法を行っているかなど)の状況が総合して見られます。気管支喘息では、症状が安定している時期の症状の程度、使っている薬、酸素療法の有無、検査の結果、日常生活の状況などが総合して見られます。
障害認定基準は、気管支喘息について、等級ごとの例を示しています。3級の例は、ゼーゼーという呼吸(喘鳴)や呼吸困難が週1回以上あり、吸入ステロイド(中用量以上)に加えて長期管理薬を2剤以上使い続け、発作止めの吸入薬を少なくとも週1回以上使う必要がある状態です。2級の例は、呼吸困難をいつも感じ、常時とは限らないものの酸素療法が必要で、飲み薬のステロイドを一定量以上使い続ける必要がある状態です。1級の例は、最大限の薬物療法を行っても大発作となり、症状のない期間がなく、肺の働きと血液中の酸素の検査値がどちらも高度の異常で、常に在宅酸素療法が必要な状態です。いずれも、日常生活の状態(一般状態区分)があわせて見られます。これらは、適切な治療を行っても、なお続いている症状であることが前提です。また、喘息は病気の性質上、肺機能や血液ガスの値だけでは重さを判断できないため、症状や治療の内容とあわせて判断するとされています。喘息に肺気腫(COPD)や肺線維症が加わっている場合は、呼吸不全の基準で認定されます。
気管支喘息の認定では、症状が安定している時期の状態をもとに、適切な治療を続けても、なお残っている症状の程度が見られます(障害認定基準 第10節)。そのため、薬で症状が抑えられている方は対象になりにくく、治療を続けても発作が治まらず、日常生活が大きく制限されているかどうかが、判断の中心になります。当センターのQ&Aには、5年前に喘息になり、今は薬で比較的落ち着いている方からのご相談があります。初診日がパートで国民年金だったため障害基礎年金になり、薬を飲んでも喘息の症状が治まらないくらいの状態でないと受け取れず、かなり重度でないともらえない、とお答えしました(Q&A)。また、糖尿病、リウマチ、喘息の3つの病気がある専業主婦の方は、いずれも軽度で、併合しても2級にならないため、受給は非常に難しい、とお答えしました(Q&A)。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。
当センターの事例
当センターで、喘息を主な病名として受給が決まった事例は、現在のところ次の1件です。
- 50代の女性の事例です。長年看護師として働いていました。25年前に風邪をひいて咳が止まらず喘息と診断されましたが、その後は症状がなく、受診もなく、仕事を続け、出産・子育てをしていました。5年前に発作があって再度喘息と診断され、投薬治療を続けましたが、去年から仕事もままならず、少しの気温の変化やにおいで発作が出るようになりました。買い物にも行けず友人に頼り、入浴は友人が見守ってくれているときしかできず、料理の調味料で発作が起きるほどでした。障害厚生年金3級(年額約59万円)が決まりました(事例)。
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ気管支喘息でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
喘息は、初診日が昔にあることが多い病気です
喘息は、子どものころや若いころに発症して、いったん症状が治まり、何年もたってから再発することがあります。障害年金の初診日は、その病気で初めて医師の診療を受けた日です。ただし、以前の受診のあと、医療を受ける必要がなくなり、仕事や家庭生活など普通の社会生活を送っていた期間が相当長く続いたあとで、同じ病気で再び受診した場合は、「社会的治癒」として、再び受診した日が初診日と扱われることがあります。社会的治癒は、法律や障害認定基準に書かれたものではなく、国の通知などで示されてきた取扱いです。認められるかどうかは、受診していなかった期間の長さだけでなく、その間の生活や仕事の状況などから個別に判断され、認められないこともあります。初診日がどちらになるかで、加入していた年金制度や保険料の納付要件の判定も変わります。
先ほどの事例(6880)では、25年前に一度喘息と診断されていましたが、その病院は閉院していて、受診状況等証明書を取得できませんでした。その後の20年間は症状も通院もなく、看護師として働き続け、出産・子育てもしていたため、5年前を初診として申請することにしました。診断書には「25年前に喘息と診断され」と書かれていましたが、申立書に「20年間問題なく生活していたため、5年前を初診日として申請する」という理由を書きました。その結果、5年前が初診日と認められました(この事例で5年前が初診日と認められたのは、個別の事情によるものです)(事例)。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
診断書と申立書で気をつけること
診断書は、「呼吸器疾患の障害用」(様式第120号の5)で、喘息の治療を受けている現在の主治医に書いてもらいます。障害認定基準は、気管支喘息について、症状が安定している時期の症状の程度、使っている薬、酸素療法の有無、検査の結果、日常生活の状況などを総合して認定するとしています。診断書を依頼するときは、発作の回数や、発作止めの薬を使う頻度、日常生活でできなくなったことを、主治医に具体的に伝えておくことが大切です。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。
病歴・就労状況等申立書には、診断書だけでは伝わらない不便を、具体的に書きます。先ほどの事例では、買い物に行けず友人に頼っていること、入浴は友人が見守ってくれているときしかできないこと、料理の調味料で発作が起きることなどを、詳しく書きました(事例)。
くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
喘息が認められなくても、ほかの病気で受け取れることがあります
障害年金では、病気ごとに障害の程度を見たうえで、複数の障害があるときは併せて(併合して)等級を決めます。そのため、喘息では等級に当たらなくても、ほかの病気で受け取れることがあります。
当センターの事例(傷病名は気管支喘息と多動性障害)には、重い喘息があり、発作が週に2回ほどあって、通院に1時間かかる自宅から病院に近い実家で生活していた40代の女性がいます。精神の病気でも通院しており、喘息と精神の2つを併せて申請しました。結果として、喘息は1級・2級に該当しないとされて不支給でしたが、精神の障害で2級が決まり、子ども2人の加算がついて、障害基礎年金(年額約123万円)を受け取りました。事例ページには、喘息で「酸素療法をしていない」ことが引っかかったのかもしれない、と書かれています(事例)。
精神の障害の認定については、発達障害で障害年金はもらえる?をご覧ください。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。呼吸器疾患は、検査の結果や症状、日常生活の状態で判断されます。先ほどの事例(6880)の方は、長年看護師として働いてきましたが、去年から仕事もままならない状態になり、障害厚生年金3級が決まりました。仕事のなかで、息苦しさのために、できなくなったことや、周囲に配慮してもらっていることがあれば、主治医に伝えて、診断書や申立書に書きましょう。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
さかのぼって受け取れることがあります
障害認定日の時点で等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります。ただし、さかのぼれるのは、時効の関係で、5年分までです。
障害認定日に等級に当たっていなかった場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。このほか、診断書の作成料(医療機関に支払う実費)は、受給できたかどうかにかかわらずご負担いただきます。医師への同行などをご依頼いただく場合は、日当がかかることがあります(100の質問Q90)。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定では、1分ほどの入力で、受給の可能性について社会保険労務士の判定を受けられます(結果は目安で、受給をお約束するものではありません)。
気管支喘息の受給事例
気管支喘息が関係する受給事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
事例は、受給をお約束するものではありません。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















