

脳内鉄沈着神経変性症(Neurodegeneration with Brain Iron Accumulation: NBIA)は、脳の特定の部位に鉄が異常に蓄積し、神経細胞が損傷することで引き起こされる神経変性疾患です。この疾患は遺伝的要因によって引き起こされることが多く、非常に稀な難病とされています。
脳の基底核や小脳といった運動機能に関わる部分に鉄が蓄積することで、運動障害や精神的な問題が現れることが特徴です。NBIAは、いくつかの異なるサブタイプがあり、それぞれ遺伝子変異や症状の現れ方が異なります。
神経フェリチンとの関係
NBIAの一部のタイプにおいて、フェリチンと呼ばれるタンパク質が関与しています。フェリチンは通常、細胞内で鉄を安全に蓄える役割を果たしていますが、NBIAではこの機能がうまく働かず、鉄の代謝異常が起こります。
特に「神経フェリチン軽鎖欠損症(Neuroferritinopathy)」と呼ばれるNBIAのサブタイプでは、フェリチンの生成に関わる遺伝子の変異が原因で、脳に鉄が異常に沈着します。この鉄の蓄積が神経細胞に有害な影響を与え、徐々に運動障害や認知機能の低下を引き起こします。
原因と発症のメカニズム
脳内鉄沈着神経変性症の主な原因は、遺伝子の変異にあります。複数の遺伝子がNBIAの原因となり得ますが、代表的なものとしては、PANK2遺伝子(Pantothenate Kinase-Associated Neurodegeneration: PKAN)やPLA2G6遺伝子が挙げられます。
これらの遺伝子の変異が鉄の代謝に影響を及ぼし、脳内で異常に鉄が蓄積することで神経細胞が損傷し、様々な神経症状が現れます。NBIAは遺伝性疾患であり、親から子に遺伝することがあります。
脳内鉄沈着神経変性症の主な症状
NBIAの症状は多岐にわたり、個人差がありますが、主に以下のような症状が見られます。
運動障害
手足の硬直や筋肉の異常な収縮、ジストニア(異常な姿勢や動作を引き起こす筋肉の痙攣)、振戦(手や足の震え)などが見られます。進行性の運動機能低下が特徴で、歩行が困難になることもあります。
精神症状
認知機能の低下、記憶障害、注意力の欠如、さらにはうつ症状や情緒不安定といった精神的な問題が見られることがあります。特に後期になると、認知症のような症状が進行する場合もあります。
視覚や聴覚の異常
視力低下や難聴など、感覚器官に関わる障害もNBIAの特徴的な症状の一つです。
自律神経症状: 排尿や消化機能などの自律神経系に異常をきたし、便秘や排尿障害が現れることもあります。
日本での難病指定と治療法
NBIAは日本では難病に指定されており、「指定難病」として公的な支援を受けることが可能です。
指定難病に該当すると、医療費助成や介護サービスの支援を受けられるほか、治療法が確立していないために適切な診断と管理が重要とされています。現時点でNBIAの根本的な治療法は存在せず、対症療法が主な治療となります。筋肉の痙攣を緩和する薬物療法や、理学療法、作業療法などが行われ、患者の生活の質を改善するためのサポートが提供されます。
障害年金の申請について
脳内鉄沈着神経変性症のような進行性の神経疾患では、障害年金の申請が可能です。
障害年金は、身体機能や精神機能に重度の障害をもたらす病気や怪我に対して支給される年金で、NBIAのような難病患者も対象となります。
障害年金の申請には、病気の診断書、過去の病歴、病状の経過、そして日常生活における支障の程度を示す書類が必要です。特に、運動機能や認知機能に大きな影響がある場合、障害等級が高く認定される可能性があります。
>>障害年金を自分で申請するのは難しい?社会保険労務士に依頼するメリットについて
まとめ
脳内鉄沈着神経変性症は、非常に稀で進行性の神経疾患です。遺伝的要因によって引き起こされ、脳内に鉄が異常に蓄積することで、運動機能の低下や認知機能障害、精神的な問題を引き起こします。現在のところ、根本的な治療法はなく、対症療法による症状の緩和が中心ですが、指定難病として医療費助成などの支援が受けられます。
また、障害年金の申請も可能であり、専門家のサポートを受けながら適切に対応することが重要です。患者とその家族にとっては、日常生活の質を維持するための長期的なサポート体制が不可欠です。
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