認知の歪みによる就労困難と障害年金 うつ病・発達障害の認定基準を社労士が解説

「どうせ自分はダメだ」「少しの失敗ですべてが終わる気がする」「周りは自分を否定しているに違いない」。このような考えが頭から離れず、仕事や日常生活がつらくなっていませんか。

これは性格の問題ではなく、「認知の歪み」と呼ばれる心理的な状態が影響している可能性があります。認知の歪みが強く、生活や就労に支障が出ている場合、障害年金の対象となることもあります。

この記事では、認知の歪みとは何か、障害年金との関係について分かりやすく解説します。

認知の歪みとは何か

認知の歪みとは、物事を現実以上に否定的・極端に捉えてしまう思考のクセのことを指します。出来事そのものよりも、「どう解釈するか」に偏りが生じ、実際よりも自分を追い込んでしまう状態です。

例えば、小さなミスを「自分は無能だ」と決めつける、他人の何気ない言動を「嫌われている証拠だ」と受け取る、完璧にできなければ「意味がない」と考えてしまうなどが典型例です。本人の意思ではなかなか修正できず、強いストレスや不安を生み出します。

認知の歪みが生活や仕事に与える影響

認知の歪みが強くなると、日常生活や仕事に大きな影響が出ます。失敗を極端に恐れて行動できなくなる、常に不安や緊張を抱えて疲弊する、人間関係を避けるようになるといった状態が続くことがあります。

仕事では、評価を過度に気にして報告や相談ができない、注意や指摘を人格否定と受け取ってしまう、失敗への恐怖から業務が進まないなどの問題が起こりやすくなります。その結果、欠勤や休職、退職に至るケースも少なくありません。

認知の歪みと関係の深い病気や障害

認知の歪みは、それ自体が診断名になるわけではありませんが、さまざまな精神疾患と深く関係しています。代表的なものとして、うつ病、不安障害、適応障害、双極性障害、強迫性障害、PTSDなどがあります。

また、発達障害(ASD・ADHD)のある方が、長年の失敗体験や叱責の積み重ねによって、強い認知の歪みを抱えるようになるケースもあります。このような場合、いわゆる「二次障害」として症状が重くなることもあります。

認知の歪みで障害年金はもらえるのか

結論として、「認知の歪み」という言葉だけで障害年金が支給されることはありません。しかし、認知の歪みを背景とする精神疾患によって、日常生活や就労が著しく制限されている場合は、障害年金の対象となる可能性があります。

障害年金では、病名以上に「生活能力」「労働能力」がどの程度制限されているかが重視されます。不安や抑うつが強く外出が難しい、対人関係が維持できない、一般就労が困難な状態が継続している場合などは、精神の障害として審査されます。

障害年金の審査で重視されるポイント

審査では、「考え方がネガティブ」という抽象的な表現ではなく、具体的な生活上の支障が見られます。例えば、一人で外出できるか、金銭管理ができているか、家族の支援が必要か、仕事でどの程度配慮が必要かといった点です。

就労している場合でも、短時間勤務に限られている、頻繁なフォローが必要、ミスや体調不良が多いといった状況であれば、必ずしも不利になるわけではありません。

診断書作成で注意したい伝え方

認知の歪みは外から見えにくく、診察室ではうまく伝えられないことも多い症状です。そのため、「不安があります」「気持ちが落ち込みます」だけで終わらせず、具体的な影響を整理して医師に伝えることが重要です。

例えば、「注意を受けると一日中動けなくなる」「失敗を思い出して眠れない」「常に最悪の結果を考えて外出できない」など、実際の生活への影響を説明することで、診断書の内容が実態に近づきます。

一人で抱え込まず専門家への相談を

認知の歪みが強い状態では、「自分は甘えているだけ」「年金なんてもらえるはずがない」と自分を責めてしまいがちです。しかし、それ自体が症状の一部であることも少なくありません。

障害年金の対象になるかどうかは、診断書や申立書の内容によって判断されます。認知の歪みが原因で生活や仕事に支障が出ている場合は、障害年金に詳しい社労士などの専門家に相談し、自分の状態を制度の視点で整理することが大切です。早めの相談が、将来への不安を軽減する第一歩になります。

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