障害年金の審査は本当に公平か?社労士が解説する日本年金機構の不適切事例

障害年金の審査をめぐり、日本年金機構の職員が医師の判定を破棄し、再判定を依頼していたという報道がありました。障害年金の申請支援を行う社会保険労務士として、この問題は決して他人事ではありません。

障害年金は、生活そのものを支える重要な制度です。本記事では、社労士の立場から今回の問題点と、申請者が知っておくべき実務上の注意点を解説します。

障害年金審査の信頼を揺るがす問題

先日、障害年金の審査において、日本年金機構の職員が医師の判定を破棄し、別の医師に再判定を依頼していたという報道がありました。障害年金の申請支援を日常的に行っている社会保険労務士として、このニュースには強い危機感を覚えています。

障害年金は、病気や障害により日常生活や就労に大きな制限を受けている方の生活を支える、極めて重要な社会保障制度です。その根幹にあるのは「医師による医学的判断」と「制度に基づく公正な審査」です。今回明らかになった行為は、その前提を大きく揺るがすものだと言わざるを得ません。

障害年金審査の本来の仕組み

障害年金の審査では、主に以下の資料が判断材料になります。

・主治医が作成する診断書
・申立書(本人の日常生活・就労状況の申告)
・初診日や保険料納付状況などの要件

これらをもとに、認定医が医学的観点から障害等級に該当するかを判断します。年金機構の役割は、あくまで制度要件に照らして事務的に確認することです。医師の医学的判断を職員の裁量で覆す権限はありません。

社労士として申請に関わる中でも、「診断書の書き方ひとつで結果が大きく変わる」現実は痛感しています。しかし、それでも最終判断は医師の専門性が尊重されるべきです。今回のように、職員の主観で「この判定はおかしい」と排除されていたとすれば、申請者は防ぎようがありません。

申請者が受ける現実的なダメージ

障害年金が不支給となった場合、申請者が受ける影響は非常に深刻です。

・収入の途絶
・生活保護に頼らざるを得ない状況
・治療継続への不安
・「自分の状態が否定された」という精神的ダメージ

特に精神疾患や難病の方は、結果通知一通で状態が悪化することも珍しくありません。社労士として相談を受ける中でも、「不支給通知を見てから症状が悪化した」という声を何度も耳にしてきました。

もし本来支給されるべき年金が、不適切な審査によって却下されていたとすれば、それは制度上のミスでは済まされない問題です。

社労士として申請者に伝えたいこと

今回の報道を受け、申請者やご家族にぜひ知っておいていただきたい点があります。

まず、不支給=終わりではありません。
障害年金には「審査請求」「再審査請求」という不服申立ての制度があります。適切な主張と資料を整えれば、結果が覆るケースも実際に存在します。

また、診断書だけに頼らず、申立書で日常生活の困難さを具体的に伝えることがますます重要になります。医師が書ききれない生活実態を補足することで、判断材料の偏りを防ぐことができます。

専門家である社労士に相談することで、制度的な視点から「どこが弱点になりやすいか」「どう補強すべきか」を整理することも可能です。

制度への信頼回復に必要なこと

今回の問題は、個人のミスではなく制度運用全体の問題として捉える必要があります。

・審査プロセスの可視化
・記録の保存と第三者チェック
・不利益を受けた可能性のある人への再調査

これらが行われなければ、障害年金制度そのものへの不信感は拭えません。支援する立場の社労士としても、「安心して勧められる制度」であってほしいと強く願っています。

まとめ

障害年金は、人生の再建を支えるための制度です。
その判断が不透明であってはならず、申請者が疑念を抱くような運用があってはなりません。

社労士である私は、制度の問題点を直視しながらも、今まさに困っている人の生活を守るため、適正な申請と不服申立てを全力で支援していきます。
そして、誰もが納得できる障害年金制度に近づくことを、専門家の立場から求め続けていきます。

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