片耳聞こえないだけでは障害年金は無理?障害手当金との違いを解説

突然、片耳が聞こえなくなった、あるいは病気や事故で片耳の聴力を失い、「障害年金の対象になるのか」「片耳だけでは何ももらえないのでは」と不安を感じる方は少なくありません。実際、片耳難聴は見た目では分かりにくく、周囲から理解されにくい障害です。

しかし、制度上は障害年金だけでなく、障害手当金という別の給付が用意されています。

本記事では、片耳が聞こえない場合の障害年金と障害手当金の考え方、認定の違い、申請時の注意点を分かりやすく解説します。

片耳が聞こえない状態とは

片耳が聞こえない状態は、突発性難聴、感音性難聴、外傷、腫瘍、感染症など、さまざまな原因で起こります。
一度失われた聴力が回復せず、医学的に固定した場合、その状態は恒久的な障害として扱われます。

片耳難聴の場合、反対側の耳が聞こえるため、日常会話がある程度成り立つこともあります。しかし、実際には生活や仕事の場面で多くの不便や制限が生じます。

片耳難聴が生活に与える影響

片耳が聞こえないと、次のような困難が生じやすくなります。

・音の方向が分からない
・騒がしい場所で会話が聞き取れない
・後方や側方からの声に気づけない
・強い疲労やストレスがたまりやすい

これらは見えにくい障害であるため、「聞こえているように見える」と誤解されやすい特徴があります。

仕事への影響と就労上の制限

仕事においても、片耳難聴は影響を及ぼします。

・電話対応が難しい
・会議で発言が聞き取れない
・安全確認が必要な作業ができない
・集中力が続かない

特に、接客業、工場、建設現場、運転を伴う業務では、配置転換や退職を余儀なくされるケースもあります。

片耳が聞こえない場合、障害年金の対象になるのか

結論から言うと、片耳が聞こえないだけでは、原則として障害年金の等級には該当しません。

障害年金の聴覚障害は、基本的に両耳の聴力を基準に判断されます。そのため、もう一方の耳の聴力が保たれている場合、年金の等級に達しないことが多いのが実情です。

障害年金に該当する可能性があるケース

次のような場合には、障害年金の対象となる可能性があります。

・片耳が失聴し、もう片耳にも重い聴力低下がある
・補聴器を使用しても会話が著しく困難
・日常生活や就労に大きな制限がある

このような場合は、障害等級2級や3級が検討されることがあります。

障害年金に該当しない場合の「障害手当金」

片耳難聴の方にとって重要なのが、障害手当金という制度です。

障害手当金は、障害年金の等級には該当しないが、一定の障害が残った場合に支給される一時金です。

障害手当金とはどんな制度か

障害手当金には、次のような特徴があります。

・初診日に厚生年金に加入していたことが条件
・障害が軽度で、年金等級に達しない場合に支給
・原則として一度きりの給付

「障害年金がもらえない=支援がない」というわけではありません。

片耳難聴は障害手当金の典型例

実務上、片耳が聞こえない状態は障害手当金の代表的な対象例です。

・聴力が恒久的に失われている
・回復の見込みがない
・日常生活や仕事に一定の制限がある

これらを満たす場合、障害手当金が認められる可能性があります。

障害手当金で見られるポイント

片耳難聴に関する障害手当金では、次の点が重視されます。

・聴力検査の結果
・症状が固定しているか
・生活や就労への影響

「片耳だから軽い」と判断されないよう、実際の困難さを具体的に伝えることが重要です。

申請時に注意すべきポイント

初診日の年金制度

障害手当金は、初診日に厚生年金に加入していた場合のみ対象となります。
国民年金のみの場合は支給されません。

症状固定日の確認

治療を続けても聴力が回復しないと医学的に判断された時点が、症状固定日となります。
この時期の整理が申請では重要です。

診断書の内容

・片耳の聴力が失われていること
・回復の見込みがないこと
・生活・仕事への影響

が明確に記載されている必要があります。

病歴・就労状況等申立書で実態を伝える

診断書だけでは伝えきれない不便さは、病歴・就労状況等申立書で補足します。

・職場での困難
・聞き返しが多いことによるストレス
・安全面の不安

を具体的に書くことで、評価につながりやすくなります。

片耳難聴でも制度を正しく知ることが大切

片耳が聞こえない状態は、周囲に理解されにくく、本人も我慢してしまいがちです。しかし、制度上は障害手当金という救済策が用意されています。

「どうせ無理だろう」と自己判断で諦めず、障害年金と障害手当金の違いを理解したうえで、状況に合った制度を検討することが大切です。

まとめ

片耳が聞こえない場合、原則として障害年金の等級には該当しないことが多いものの、障害手当金の対象となる可能性があります。

重要なのは、
・障害年金と障害手当金の違いを理解すること
・実際の生活・就労への影響を正確に伝えること

片耳難聴で悩んでいる方は、制度を知ることで、生活を支える一歩につながる可能性があります。

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