結論:ALSでも、障害年金を受け取れることがあります
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、障害年金の対象になる病気です。ALSは、体を動かすのに必要な筋肉が、徐々にやせて、力がなくなっていく難病です。障害年金では、病名ではなく、手足の動き、歩く・立つ・食事・着替えなどの日常生活の動作、飲み込みや話すこと、呼吸の状態などが、どれだけ制限されているかが見られます。
受け取るための条件は、大きく3つです。初診日(ALSで初めて医師の診療を受けた日。診断が確定する前の、手足の動かしにくさなどでの受診日が、初診日になることがあります)に、国民年金か厚生年金に加入していたこと。初診日の前日までの保険料の納付状況が要件を満たしていること。そして、障害認定日(原則として初診日から1年6か月後。ALSでは、人工呼吸器や胃ろうなどの措置により、それより早くなる特例があります。初診日が20歳前の場合は、1年6か月後と20歳に達した日のいずれか遅いほう)か、その後65歳になるまでに、障害の状態が等級に当たっていることです(後者の場合の請求は、65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります)。
ALSは、症状が日ごとに進みます。そのため、いつの状態で請求するかによって、等級や受け取れる額が変わることがあります。この記事では、ALSで障害年金を考えているご本人やご家族のために、受け取れるかどうかの考え方、準備するもの、注意点を説明します。
ALSで障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです(ただし、20歳になる前で、年金制度に加入していなかった期間に初診日がある場合も、障害基礎年金の対象になります。この場合は保険料の納付は問われませんが、本人の所得による支給制限があります。20歳前でも、会社員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、厚生年金の期間として扱われます。また、日本に住んでいる60歳以上65歳未満で、年金制度に加入していない期間に初診日がある場合も、障害基礎年金の対象になります。この期間については、老齢基礎年金を繰り上げて受け取っている方は対象になりません)。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。自営業やフリーランス、学生などで国民年金に加入していた期間に初診日があれば、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって、初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。ALSの場合は、手足の動き、日常生活の動作、飲み込みや話すこと、呼吸の状態などが、あわせて見られます。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
ALSは、どのように等級が判断されるのか
ALSという病名は、障害認定基準には挙げられていません。ALSのように、神経の病気で手足が動かしにくくなっている場合、認定基準の「神経系統の障害」の節は、手足の障害を「肢体の障害」の基準で認定するとしています。そして、障害が手足の広い範囲に及ぶ場合は、上肢・下肢・体幹を別々に見るのではなく、「肢体の機能の障害」としてまとめて認定されます(認定基準には、脳血管障害、脊髄損傷、進行性筋ジストロフィーなどが例として挙げられています)。関節の動く範囲、筋力、巧緻性(手先の器用さ)、速さ、耐久性を考えたうえで、日常生活の動作(つまむ、握る、さじで食事をする、顔を洗う、上着を着たり脱いだりする、歩く、立ち上がる、階段を上り下りするなど)の状態から、総合的に判断されます。
肢体の障害の等級のおおまかな考え方は、次のとおりです。1級は、日常生活の用を弁ずることができない程度、2級は、日常生活が著しい制限を受けるか、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度、3級は、労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものです。なお、症状が固定していない(傷病が治っていない)場合は、労働が制限を受ける程度でも3級に当たるとされています。手足の広い範囲に障害がある場合の例として、認定基準は、四肢の機能に相当程度の障害を残すものを1級、四肢に機能障害を残すものを2級、一上肢及び一下肢に機能障害を残すものを3級と示しています。
ALSでは、手足のほかに、飲み込み(嚥下)、話すこと(発音)、呼吸にも障害が出ることがあります。その場合は、そしゃく・嚥下機能の障害、音声又は言語機能の障害、呼吸器疾患による障害の、それぞれの認定基準でも障害の程度が見られ、2つ以上の障害があるときは、それらを併合(または総合)して等級が決まります。たとえば、口から食べ物を摂ることができない状態は「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」、話すことがほとんどできず日常会話が誰とも成り立たない状態は「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」として、それぞれ2級の基準に当たります。呼吸器疾患の認定基準では、慢性呼吸不全の原因として神経・筋疾患も挙げられています。
人工呼吸器や胃ろうを使っている場合の、障害認定日の特例
ALSのように、現在の医学では根本的な治療方法がなく、今後の回復が期待できない病気で、初診日から6か月が過ぎた日以後に、気管切開をしての人工呼吸器の使用や胃ろうなどの恒久的な措置が行われていて、日常生活の用を弁ずることができない状態と認められるときは、初診日から1年6か月を待たずに、障害認定日として扱われます(障害認定基準 第9節 神経系統の障害)。措置が行われていることと、日常生活の用を弁ずることができない状態であることの、両方が必要です。認定基準の文言は「気管切開下での人工呼吸器」で、気管切開をしないマスク式の人工呼吸器は、文言上は挙げられていません。また、常時(24時間)の在宅酸素療法を始めた場合は、呼吸器疾患の認定基準で、開始した日(初診日から1年6か月以内の場合)が障害の程度を認定する時期とされています。
等級の決まり方は、100の質問の「障害年金の等級(1級・2級・3級)はどう決まりますか?」(Q4)をご覧ください。
診断書は、実際の状態が伝わっているか、確認します
ALSは、悪化していく病気ですが、診断書を書く医師が、障害年金の診断書に慣れていない場合、実際の状態が十分に書かれないことがあります。当センターの事例では、認定日の診断書はA病院、現在の診断書はK病院でしたが、出来上がった現在の診断書が、認定日の診断書より軽い内容になっていました。悪化していく難病で、診断書の内容が良くなっているのは考えにくく、そのままでは、症状が良くなっていて障害年金は必要ないと判断されるおそれがあるため、医療機関に、現在の症状が正確に反映された診断書になるよう確認を依頼しました。その結果、認定日の診断書と同じか、より悪化した内容の診断書に修正してもらい、障害基礎年金2級が決まり、2年さかのぼって約175万円を受け取りました。
障害年金の診断書は、専用の様式です。診断書に書かれている内容が、必ずしも、ご本人の症状をそのまま書いているとは限りません。出来上がった診断書は、提出する前に、実際の状態と合っているか確認することをおすすめします。
診断が確定するまでの時間と、初診日
ALSは、診断が確定するまでに時間がかかることが多い病気です。当センターの事例には、手の関節が動かしにくくなって近くの整形外科を受診したものの、異常がなく、総合病院を紹介されて詳しい検査をしてALSと診断された事例があります。難病では、初診から確定診断まで、日数が経っていることが多くあります。
障害年金の初診日は、障害の原因となった病気について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です(障害認定基準 第1 一般的事項)。ALSと診断された日ではありません。手足の動かしにくさなどで整形外科などを受診し、そのときは別の病名や「異常なし」とされた場合でも、その症状がALSによるものと判断されれば、その受診日が初診日になることがあります。初診日によって、加入していた年金制度(国民年金か厚生年金か)、保険料の納付要件、障害認定日が決まります。最初に受診した医療機関と日付を、できるだけ正確に確認しておくことが大切です。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
認定日請求と事後重症請求は、どちらが得か
ALSは、症状が日ごとに進みます。障害認定日(原則として初診日から1年6か月が過ぎた日。気管切開による人工呼吸器や胃ろうなどの特例に当たる場合は、それより早くなります)のころの状態で請求する方法(認定日請求)と、悪化したあとの現在の状態で請求する方法(事後重症請求)があります。
当センターの事例には、初診から2年が過ぎていて、認定日請求ができる状況でしたが、医師に相談したところ、「日ごとに症状は悪化していて、認定日の症状より現在のほうが明らかに悪化している。現在の症状を診断書に書いたほうが、実質の受給額は多くなるのでは」という意見があり、事後重症請求にした事例があります。結果は、障害厚生年金2級で、お子さんの加算を含めて年間約160万円でした。認定日請求をした場合は、3級程度と考えられ、年間約58万円で、そこから1年が経たなければ、額改定請求(等級を上げる請求)ができなかった、というのが、この事例の時点での当センターの判断でした(人工呼吸器の常時装着など、省令で定める状態になった場合は、1年を待たずに請求できます)。
認定日請求と事後重症請求のどちらが適しているかは、病気の進み方と、認定日と現在のそれぞれの状態によって変わります。一方で、認定日請求ができる状態であれば、さかのぼって受け取れる金額が大きくなる場合もあります(先ほどの2年さかのぼった事例のように)。診断書を取る前に、どちらが適しているか、相談することをおすすめします。
なお、額改定請求(等級を上げる請求)は原則として1年を待つ必要がありますが、障害の程度が明らかに重くなった場合として省令で定める状態になったときは、1年を待たずに請求できます。省令には、人工呼吸器を装着したもの(1か月を超えて常時装着している場合に限ります)や、四肢が完全に麻痺したものなどが挙げられています(国民年金法第34条第3項、国民年金法施行規則第33条の2の2)。胃ろうは、この省令には挙げられていません。
くわしくは、100の質問の「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
ご家族が、手続きをする場合
ALSでは、ご本人が体を動かせない、話せないなどで、ご家族が手続きを進めることが多くなります。当センターの事例にも、ご本人が体を動かすことができないため、ご主人が相談に来られた事例があります。当センターは、四国全域の方を対象に、電話、メール、LINE、Zoom、郵送などで手続きを進められます。ご本人の同意があれば、ご家族だけでのご相談も承ります。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。ただし、ALSは症状が進むと、仕事を続けるのが難しくなります。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)と「フルタイムで働いていても障害年金はもらえますか?」(Q54)をご覧ください。
診断書は、何科の医師に、どう書いてもらうか
障害年金の診断書は、障害の種類ごとに様式が分かれています。ALSで手足の障害を請求する場合は、肢体の障害用の様式(様式第120号の3)を、現在の主治医に書いてもらいます。飲み込みや話すことに障害がある場合は「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用」、呼吸に障害がある場合は「呼吸器疾患の障害用」の診断書が別に必要になることがあります。どの診断書が必要かは、依頼する前に年金事務所などで確認してください。
診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
障害者手帳との関係
障害年金と、障害者手帳は、別の制度です。手帳があることと、障害年金を受け取れることは別で、手帳を持っていなくても、障害年金の申請はできます。くわしくは、100の質問の「障害者手帳を持っていれば障害年金をもらえますか?」(Q7)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。受け取れることが決まると、年金証書が届き、1〜2か月後ごろに最初の振込が始まります。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。ただし原則として、年金を受ける権利が発生した日(受給権を取得した日)や、障害の程度の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません(人工呼吸器を1か月を超えて常時装着している場合など、障害の程度が明らかに重くなったと省令で定める場合は、1年を待たずに請求できます)。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。このほか、診断書の作成料(医療機関に支払う実費)は、受給できたかどうかにかかわらずご負担いただきます。医師への同行などをご依頼いただく場合は、日当がかかることがあります(100の質問Q90)。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定では、1分ほどの入力で、受給の可能性について社会保険労務士の判定を受けられます(結果は目安で、受給をお約束するものではありません)。
ALSの受給事例
ALSで障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 整形外科で異常なし、総合病院受診で筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断。障害年金2級を受給できたケース
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)で軽めに書かれた診断書を訂正してもらい障害基礎年金2級を取得、2年遡及約175万円、年間78万円を受給できたケース
事例は、受給をお約束するものではありません。同じ病名でも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
関連するコラム・Q&A:
制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一
難病全般については、難病で障害年金はもらえる?でも解説しています。






















