結論:椎間板ヘルニアでも、症状が重ければ障害年金を受け取れます
椎間板ヘルニアで障害年金を受け取れることはあります。ただし、ヘルニアという診断名があるだけでは受け取れません。障害年金は、病名ではなく、痛みやしびれ、麻痺のために、立つ、歩く、座るなどの動作や、仕事、日常生活がどのくらい制限されているかで決まります。ヘルニアの場合は、主に障害認定基準の「肢体の障害」(体幹・脊柱の機能、下肢の障害)で判断されます。
もう1つ大切なのは、年金制度の違いです。3級は障害厚生年金にしかありません。初診日(ヘルニアで初めて医師の診療を受けた日)に厚生年金に加入していた方は、3級の基準に当たれば受け取れます。初診日に国民年金に加入していた方(自営業、無職、配偶者の扶養に入っている主婦・主夫など)は、2級以上の基準に当たらないと受け取れません。
この記事は、椎間板ヘルニア(腰椎、頸椎)で障害年金を考えている方と、そのご家族のために、受け取れるかどうかの考え方と、準備するもの、注意点を説明します。
ヘルニアで障害年金を受け取れるのは、どんなときか
条件の1つめは、初診日に年金制度へ加入していたことです。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、1級・2級では障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされ、3級では障害厚生年金だけが支給されます。国民年金の期間に初診日がある方は、障害基礎年金(1級・2級)の対象になります。
2つめは、保険料の納付です。初診日がある月の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることが原則です(初診日の前日で判定します)。令和18年3月末までに初診日があって初診日に65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの1年間に未納がなければよい、という特例もあります。
3つめは、障害の程度です。次の節で説明します。
初診日や納付要件のくわしい説明は、100の質問の「初診日とは何ですか?」(Q13)と「障害年金はどんな人がもらえますか?」(Q2)をご覧ください。
等級の目安:どこまでの状態が基準になるか
ヘルニアの等級は、障害認定基準の「肢体の障害」のうち、主に「体幹・脊柱の機能の障害」と「下肢の障害」の基準で判断されます。首のヘルニアなどで手と足の両方に麻痺が出ている場合は、「肢体の機能の障害」として手足をあわせて判断されます。また、痛みは原則として認定の対象になりませんが、神経の根もとが圧迫されて起こる痛み(根性疼痛)などは、軽い仕事以外の仕事に常に支障がある程度であれば3級とされています(障害認定基準 第3第1章 第7節・第9節)。
基準の例を一部ご紹介します。可動域は、いずれも医師が手で動かして測る「他動可動域」で見られます。
- 背骨(首・腰):背骨の明らかな変化(器質的変化)のために、動く範囲が参考となる範囲の2分の1以下に制限されている場合は3級、4分の3以下の場合は障害手当金(厚生年金の一時金)の目安です。ズボンの着脱、靴下を履く、座る、深くおじぎをする、立ち上がる、といった日常の動作もあわせて見られます。
- 脚:片脚の3大関節(股・膝・足首)のうち2関節の動く範囲が、反対の脚の2分の1以下になっている場合は3級です。両脚のそれぞれ1関節の筋力が半分になっている場合も3級の例です。片脚の3大関節のうち2関節以上が全く用を廃した場合(よくない位置で固まっている、動く範囲が反対の脚の2分の1以下で筋力も半分になっている、筋力がほとんどないなど)は2級です。両脚のそれぞれ1関節の動く範囲が2分の1以下で、筋力も半分になっている場合も2級の例です。両脚とも、それぞれ2関節以上が全く用を廃した場合は1級です。
- 胴体の麻痺:室内は補助具なしで移動できても、屋外では杖や松葉杖が必要な程度は2級、座っていられない、自力で立ち上がれない程度は1級とされています(高度の体幹麻痺を想定した基準です)。
実際の認定は、関節の動きだけでなく、筋力、動作の速さや耐久性、日常生活の動作の状態を総合して判断されます。
当センターのQ&Aには、2年ほど前にヘルニアになり、仕事がなかなかできない状態の方からのご相談があります。初診日が国民年金の期間にあったため、2級に当たらないと受け取れない方でしたが、症状をお聞きすると、障害の状態が2級までは届いていない状態でした(Q&A)。ヘルニアでも障害年金を受け取れることはありますが、障害の状態が等級に当たらなければ受け取れません。
当センターの事例:3級で2級の分かれ目
同じ腰のヘルニアでも、3級になった事例と、2級になった事例があります。
- 腰痛により5メートル歩くのもやっとで、座って話している途中でも激痛で話が止まる30代の男性の事例です。前の病院の記載をめぐって初診日の確認が必要になりましたが(くわしくは後の節)、初診日は認められました。手足の関節の可動域に問題がなかったため、2級にはならず、障害厚生年金3級(年額約58万円)が決まりました(事例)。
- 3年前に突然動けなくなった30代の男性の事例です。手術のあとに足の感覚がなくなり、両下肢の装具と両手の杖でゆっくり歩く状態で、排尿・排便の障害もありました。初診日が国民年金のため、2級にならなければ受け取れない状態でした。認定日ごろは装具なしで歩けていたため、事後重症請求を選びました。診断書には膀胱直腸障害を書いてもらい、申立書には、おむつを着けていること、10分も椅子に座れないこと、立っているだけでもつらいことを詳しく書いて、障害基礎年金2級(年額約78万円)が決まりました(事例)。
仕事が原因のヘルニア、労災を受けているとき
仕事中や通勤中の事故、仕事の負担が原因のヘルニアは、労災保険の対象になることがあります。労災保険から給付を受けている場合でも、障害年金を請求できます。同じ原因で障害年金と労災の年金(障害(補償)等年金・傷病(補償)等年金)を受ける場合は、障害年金は全額支給され、労災の年金のほうが一定の率(0.73〜0.88)をかけて減額されます。休業(補償)等給付を受けている期間に、同じ原因の障害年金が支給される場合も、休業(補償)等給付のほうが減額されます(厚生労働省「労災保険給付と厚生年金の両方を受け取ることはできるのでしょうか」)。ただし、20歳前に初診日がある障害基礎年金(厚生年金に加入していた間に初診日がある場合を除きます)は例外です。この年金は、労災の年金を受けている間、労災の年金の額の範囲で、障害年金のほうが支給停止になります(国民年金法第36条の2)。
当センターの事例には、長年大型トラックの運転をしていて、勤務先の車両から強い振動を受けるうちに腰椎椎間板ヘルニアが悪化した50代の男性がいます。労災の休業補償や障害補償給付を受けながら療養していましたが、痛みと運動の制限が慢性化して相談に来られました。認定日の診断書と現在の診断書の両方を作成してもらい、障害厚生年金3級(年額約61万円)と、さかのぼり分(一時金220万円)が決まりました(事例)。
障害認定日と、さかのぼり請求
障害年金の障害認定日は、原則として、初診日から1年6か月が過ぎた日です。障害認定日に、障害の状態が等級に当たっていたことが認められると、障害認定日の翌月分までさかのぼって年金を受け取れることがあります(遡及請求。時効のため、受け取れるのは5年分までです)。障害認定日のころの診断書で、関節の動きの計測が足りないことがあります。当センターの事例では、初診から同じ病院に通い続けていて、症状が変わっていないことが確認できたため、現在と同じように認定日の診断書を作成してもらえました(前の節の事例12333)。認定日の診断書は、そのころのカルテなどの記録をもとに医師が判断して書くものなので、必ずこうできるわけではありません。
障害認定日に等級に当たっていなかった場合は、その後に症状が重くなったときに「事後重症」として請求できます。事後重症の請求は、65歳の誕生日の前々日までにする必要があり、年金は請求した月の翌月分から支給されます。さかのぼっては受け取れません。
くわしくは、100の質問の「障害認定日はいつになりますか?」(Q12)と「遡及請求(さかのぼって受給)とは何ですか?何年分までもらえますか?」(Q78)をご覧ください。
初診日の確認が、最初の大切な作業です
ヘルニアは、整形外科、整骨院、ペインクリニックなど、複数の場所に通うことがあり、初診日があいまいになりやすい病気です。初診日は、医師または歯科医師の診療を受けた日です。整骨院・接骨院だけに通っていた日は、初診日になりません。
当センターの事例には、ヘルニアと診断された整形外科に受診状況等証明書を作成してもらったところ、「腰痛により前医を受診」と書かれていたものがあります。前医に確認すると、当時の受診は腰痛とはまったく違う理由でした。この理由を申立書に書いて、ヘルニアと診断された整形外科を初診として申請し、認められました(前の節の事例6661)。
初診日が分からないときは、100の質問の「初診日が分からないときはどうすればよいですか?」(Q26)をご覧ください。
診断書と申立書で気をつけること
診断書は、肢体の障害用の様式(様式第120号の3)で、現在の主治医に書いてもらいます。診断書には、関節の動きの計測、筋力、しびれ、歩行や立ち座りの状態を、具体的に書いてもらうことが大切です。肢体の障害用の診断書には、背骨の動く範囲と、それにともなう神経の症状を書く欄、麻痺の部位や種類、排尿障害・排便障害の有無を書く欄があります。障害認定基準でも、背骨の障害は、それにともなう神経の症状を含めて総合的に認定するとされています。排尿・排便の障害がある場合は、その有無を記入してもらい、おむつを使っている、自分で導尿しているなどの状態も、診断書の「その他の精神・身体の障害の状態」や備考の欄に書いてもらうとよいでしょう。診断書の費用は、医療機関ごとに決められており、健康保険の対象外です。依頼する前に、料金と作成にかかる期間を確認してください。
申立書(病歴・就労状況等申立書)には、診断書の欄だけでは伝わらない不便を、具体的に書きます。「5メートルも続けて歩けない」「10分も椅子に座っていられない」「立っているだけでもつらい」など、数字や場面で書くと伝わりやすくなります。
障害年金の申請では、ご自身の症状をすべて書こうとされる方がいます。症状をたくさん書きすぎると、審査する人にとって、どの症状がどこまで悪いのかが分かりにくくなることがあります(Q&A)。ヘルニアなら、歩く、立つ、座る、排尿・排便など、生活で特に困っていることが伝わるように書くことが大切です。
くわしくは、100の質問の「診断書はどの医療機関で書いてもらえばよいですか?」(Q19)をご覧ください。
働いていても、受け取れますか
働いていることだけを理由に、対象外になるわけではありません。肢体の障害は、関節の動く範囲や筋力、歩行や立ち座りなど日常の動作の状態で判断されます。そのうえで、下肢の障害などの3級の基準は「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」と定められていて、肢体の障害用の診断書には、医師が「日常生活活動能力」だけでなく「労働能力」も必ず書く欄があります。立ち仕事や重い物を持つ作業ができなくなった、座っていられる時間が短くなった、職場で配置や勤務時間を変えてもらっている、といった事情は、医師に伝えて診断書に書いてもらい、申立書にも具体的に書きましょう。
くわしくは、100の質問の「働いていると障害年金はもらえませんか?」(Q53)をご覧ください。
受け取れる金額の目安
障害基礎年金は定額です。令和8年度(2026年度)は、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。子がいる場合は、加算があります)。障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間や、それまでの給与の額で変わります。1級・2級では、障害基礎年金に上乗せして支給されます。3級には最低保障額(令和8年度は年額635,500円・昭和31年4月2日以後生まれの方の額)があります。
障害年金は、所得税や住民税がかからない年金です。年金額は年度ごとに改定されるため、最新の金額は、障害年金の金額のページでご確認ください。
申請の流れと、結果が出るまでの期間
申請は、初診日と年金制度の確認、初診日の証明、診断書の依頼、申立書の作成、年金請求書の提出、という順で進みます。年金請求書を提出してから、決定の通知と年金証書が届くまでは、3か月程度が目安です(日本年金機構「障害年金ガイド」の目安です。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合などは、通常より時間がかかることがあります)。
くわしい手順は、100の質問の「障害年金の申請の流れを教えてください」(Q17)をご覧ください。
不支給になった場合と、受給後の更新
審査の結果、不支給になることもあります。不支給の通知が届いたときは、決定を知った日の翌日から3か月以内に、審査請求ができます(共済組合等が決定した場合は、不服申立ての窓口が異なります)。診断書や資料をそろえ直して、あらためて請求し直す方法もあります。どちらが適しているかは、不支給の理由によって変わります。
障害年金を受け取り始めたあとも、多くの場合、1〜5年ごとに、障害状態確認届(診断書)を提出して、障害の状態を確認されます。症状が改善したと判断されると、年金額が下がったり、支給が停止したりすることがあります。反対に、悪化したときは、等級を上げる請求(額改定請求)ができます。ただし原則として、受給権を取得した日か、前回の診査を受けた日から1年が過ぎてからでないと請求できません。3級の障害厚生年金だけを受けている方(過去に2級以上になったことがない方)は、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
くわしくは、100の質問の「不支給の通知が届きました。どうすればよいですか?」(Q68)と、「障害年金の更新(障害状態確認届)とは何ですか?」(Q72)をご覧ください。
当センターに、ご相談ください
愛媛・松山障害年金相談センター(運営:社会保険労務士法人あいパートナーズ)は、四国全域の方を対象に、障害年金の申請をサポートしています。初回の相談は無料です。電話、メール、LINE、Zoomでのご相談に加えて、LINE・郵送・メールだけで申請を進めることもできます。入院中の方やご家族だけでのご相談も、ご本人の同意があれば承ります。一度も事務所にお越しにならずに、受給された方もいらっしゃいます。
料金は、受給後報酬型です。受給できた場合に、受給後報酬をいただきます。受給できなかった場合は、受給後報酬はいただきません。ただし、事務手数料(2.2万円・税込)は、委託後1週間以内にお支払いいただき、結果にかかわらず返金できません。くわしくは、サポート料金のページをご覧ください。受給をお約束するものではありません。
電話:089-907-3797(平日9:00〜18:00)。LINEとメールは、24時間受け付けています。無料受給判定で、受け取れる可能性を、1分で確認することもできます。
ヘルニアの受給事例
椎間板ヘルニアで障害年金を受給された方の事例を、一部ご紹介します。個人が特定されないよう、内容を調整しています。
- 椎間板ヘルニアにより障害厚生年金3級、年間約58万円受給した事例
- 腰椎間板ヘルニアで障害基礎年金2級が決定した事例
- トラック乗務中の振動負荷で腰椎椎間板ヘルニアが悪化し障害厚生年金3級を受給された事例
事例は、受給をお約束するものではありません。同じヘルニアでも、結果は一人ひとりの状況で異なります。
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制度の内容は、2026年10月時点の日本年金機構などの公開情報にもとづいています。法改正などで変わることがあります。
執筆・監修:社会保険労務士法人あいパートナーズ 代表 社会保険労務士 岩本浩一






















